2025年8月6日水曜日

「泣けない人(不思議な入金編)その2」

 

「泣けない人(不思議な入金編)その2」
 


守叔父さんの家に帰り着いた。
 

「安西さんに騙されたのを調べる為に、
銀行の通帳を見せて。」


とお願いした。すると、守叔父さんは、

 

「ツウチョウ?」
(通帳?)



と先程と同じ様に少し戸惑いの表情で言った。それほど時間が経ってないのに、忘れてしまったのだろうか?

 

「銀行のお金を書いたやつ。
こんな形のやつ。」



と、先程と同じ様に、指で横長の長方形を描きながらと言い直すと、

 

「アア、ワカッタ」
(ああ、分かった)



と思い出してくれた様だった。

パソコンの置かれた事務机の横には、金属製の二段引き出しのキャビネットがあった。

その中に通帳があるようだ。

施錠されているようで、ポケットから鍵を取り出し開錠し、上段を引き出した。

一番手前に通帳が入っていた。守叔父さんは取り出して、

 

「コレ?」
(これ?)



と言った。

 

「そうそう、それ!
それを見せて!」



と伝えると、

 

「ハイ、ドウゾ。
アンザイヲツカマエテ!」
(はい、どうぞ。
安西を捕まえて!)



と言って、通帳を手渡してくれた。


自分のものではない通帳を見る事には少しだけ抵抗があったが、守叔父さんの事を理解するためにはやむを得なしと考えて目を通すことにした。

見ることのできるチャンスはこの一度だけかもしれないと覚悟して、少し緊張しつつも冷静にページをめくった。

一通りザッと目を通すと、見開き一面と次の見開き一面の半分の計3ページに記帳されたものだった。

1ページ目の最初の行の日付を見ると三か月前に繰り越されたばかりの新しい通帳であることがわかった。

繰り越された金額は、数十万円程であった。

月毎の定期的な入出金が数件と週一程度の不定期な出金が記録されていた。

「給与 * カ) サトウシステム」と言う入金があった。

「給与」と言う入金があるって事は、働いているってことだ!

金額は9月分、10月分、11月分共にまったく同額であり、首都圏のサラリーマンの平均月収程度の金額であった。

鹿児島と比較するならば、平均よりだいぶ高額な月収であった。

言葉が不自由な状態で、どの様な仕事をすればこの金額を稼げるのだろう?

通帳が切り替えられており、それ以前の収入の状況はその通帳だけでは分からなかった。

とりあえず、勤務先の社名が分かったので、職場を探す事もできるだろう。

サトウシステムとは、何処にある、どんな会社なのだろう・・・?

(つづく)

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