2022年3月30日水曜日

「泣けない人」その7

7、Mission.1 下準備(1) 情報収集5

ショートメッセージへのリアクションもなく、直接電話しても出ない。
ますます、トラブルの予感が高まってきた。

もう一度、電話を掛けるか、掛けないか悩んでいる間に、散歩道は下り坂の山道から平坦な道となり、視界も開けていた。

右手に桜島、左手に霧島連峰が見えるところに出ていた。

民家の筋へ入り込み、散歩の中間点を過ぎた頃、電話が震え、着信音がなり始めた。

守叔父さんからの着信であった。

歩いている足を止め、落ち着いて電話に出る事にした。

着信ボタンを押し、自分の方から、声を掛けた。
 


「もしもし、・・・。」
 


ゴソゴソ音がするものの返答が無い。
向こうから掛けて来ているのに・・・、なぜだろう。
ほんの少しだけ間を置いた後、こちらから再度、声を掛けた。
 


「守叔父さん、柑太郎です。
ご無沙汰しております。
お元気ですか?」
 


今度は、返答があった。
 


「ア・ア!」
 


との一言だけ。
 

チョッと、変だな…。
続けて、
 


「元気ですか?」
 

と、問いかけた。
 


「ゲ・ン・キ!」
 


との、たった一言。
あまり力の入っていない言葉が戻ってきた。
感嘆符!を付ける必要はないかもしれない程の声であった。

続けて、
 


「叔父さん所に、
久しぶりに遊びに行きたいんだけど、
都合いかがですか?
仕事、忙しいですか?」
 


と伝えると、
 


「イ・マ、シ・ゴ・ト、チュウ、



ア・イ・テ、



デ・キ・ナ・イ、







オ、カ、ネ、ナ、イ・・・。」
 


たどたどしい感じで、都合が悪そうな感じの返答が帰ってきた。

守叔父さん側からの着信であったため、心の余裕があまりない状況での、思わぬ力のない声に、自分も話を長引かせて、状況把握するための気力も萎えてしまっていた。
 

遊びに行って良い?との問いに、来て欲しくない様子の返答が戻ってきたこととなる。
 

家に行くわけじゃなくて、東京へ遊びに行くついでに寄ろうと思っているんだよと言ってみたものの、その反応は、良いものではなかった。
 

会話も続かず、10分弱で電話を切る事となった。


2022/11/23 9:15 通話時間 7:54
 

(つづく)
 

本日、アップします。「泣けない人」その7

「泣けない人」その7

 

『7、Mission.1 下準備(1) 情報収集5』

 

本日、PM7:00にアップします。

 

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2022年3月23日水曜日

「泣けない人」その6

6、Mission.1 下準備(1) 情報収集4

 

心拍が上がると、自然と焦りが生まれる事がある。何かやり忘れた事が無いか?など…。

 

そうだ、めぐみ叔母さんへの連絡をしてなかった!

 

米国ワシントン州シアトル郊外に住むめぐみ叔母さんとは、以前は、国際電話のため、気軽には会話する事ができなかった。

今では、LINE電話の無料通話のおかげで、気楽に連絡を取り合えるようになっている。

時差を考慮し、日本時間の朝方に連絡を入れるのが、返事も受けやすい。

とりあえず、メッセージだけ送ることにした。


 

「こんにちは、柑太郎です(^_^)/

豊治おじさまから、仕事!?を受けました。

守おじさまの様子を見に行って欲しいとの事。

めぐみおばさまは、一週間位前に、守おじさまと

話ししたそうですが、どんな様子でした

か?」

2021/11/23(火) 8:52


 

めぐみ叔母さんへのメッセージを送信後、他に忘れている事ないかな・・・。

 

そうだ、守叔父さんからの連絡が戻ってこない事を、豊治叔父さんへ報告しよう。

散歩の下り坂をゆっくりと歩き、心拍数が少しずつ下がるのを感じながら、メッセージを打ち込んだ。


 

「豊治おじさま おはようございま

す。柑太郎です(^_^)/ 昨夕、守おじさ

まの携帯(090 070から始まるもの両

方)にショートメールいれました

が、まだ、返事ありません。簡単で

すが、ご報告まで。」

2021/11/23 09:01


 

続けて、もう一通のメッセージを打ち込んだ。

 

 

「本日昼過ぎに、守おじさまに電話掛

けてみようと思います。 」

2021/11/23 09:03 


 

まだ、自分の中では、朝一の今、直接電話する勇気が足りていなかった。

 

2通のメッセージを送信した直後、豊治叔父さんからの返信が速攻で届いた。


 

「今の時間なら電話をかけ続ければ出

るかもしれません。試して下さい。

寝てるかもしれません。」

2021/11/23 09:04


 

守叔父さんへ電話する前に、豊治叔父さんへの返事をまず。

 

 

「承知しました(^-^) 今、かけてみま

す。」

2021/11/23 09:05


 

昨夕から今現在に至り、自分から守叔父さんへ直接電話する勇気が無かったところを、豊治叔父さんによって、チョッとだけ背中を押して貰うこととなった。

 

そして、ちょうど、下り坂の勢いで、背中を押されるようにも感じている状況でもあった。


 

恐る恐る、守叔父さんへ電話。

 

呼び出し音が、

 

1回、

 

2回、

 

3回、

 

 

 

 

 

10回

 

を数えても、守叔父さんの応答はなかったので、通話をキャンセルすることとなった。

2021/11/23 9:06


 

(つづく)

 

本日、アップします。「泣けない人」その6

「泣けない人」その6

 

『6、Mission.1 下準備(1) 情報収集4』

 

本日、PM7:00にアップします。

 

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2022年3月16日水曜日

「泣けない人」その5

5、Mission.1 下準備(1) 情報収集3

最初は、東京旅行のついでに、守叔父さんに会って、そして、鹿児島に戻れば良いなと、考えていた。
が、守叔父さんの連絡を待つ時間と共に、色々な事を頭の中でシミュレーションし始めた自分がいた。つまり、最初の自分の心とは、少しずつ、変化していた。

そこには、遊びに行けるという期待だけでなく、迷い、戸惑い、後悔、不安、勇気などの様々な感情が湧いては消え、また別の感情が湧きと言った風で、色々な感情が入り混じり、混沌こんとんとしていた。

そんな状況で、守叔父さんからの返事を待ちつつ、豊治叔父さんへのメッセージを送信した。
 


「守おじに、ショートメール入れてま
すが、まだ返事がありません。 遊
びに行くと言う、取っ掛かりを準備
中です。」
2021/11/22 19:22
 


「めぐみおばさんへ連絡しようと思い
ます。」
2021/11/22 19:23
 


たて続けに2通ショートメッセージを送信。
即座に、豊治叔父さんより返信あり。
 


「了解です。ありがとう😊」
2021/11/22 19:24
 


豊治叔父さんからのその返信を受け、その日の作業は終了とすることとし、ただひたすら、守叔父さんからのリアクションを待ち続ける事となった。

そして、翌朝を迎える事となった。

ひたすら、「待つ」と言うのも、難儀なんぎな事で、目が覚めた早朝から、メールチェックをしてみるが、守叔父さんからの返信は無かった。

この頃は、ある意味、返事が無い事を期待している自分も居た。守叔父さんが、何らかのトラブルに巻き込まれている可能性が高まったと、考えられるからだ。

もちろん、守叔父さんがトラブルに巻き込まれていない事が良い事。
そうすれば、ただ単に旅行の途中で、会うだけで済むこととなる。

しかし、様々な感情にさいなまれている私にとっては、トラブルがあり、そのトラブルを解決しよう!と言う目的のある方が、上京することへの不安を消し去る原動力となり得た。

その結果、心だけが、勝手にトラブル解決へのアドベンチャーをスタートしはじめたのである。

はやる気持ちを抑えるために、日課の散歩へと出かける事とした。

高低差約100mの散歩道。いつものルートである。行程こうていは約1時間。

いつもより興奮しているのか、歩幅が広く、そして、リズムが早いのだろうか、その最も標高の高い所で、いつもより汗ばんでしまい、タオルで髪の毛をひたすら拭く事となった。

息もいつもより上がり、心拍数もだいぶ上がっていた。

(つづく)
 

本日、アップします。「泣けない人」その5

「泣けない人」その5

 

『5、Mission.1 下準備(1) 情報収集3』

 

本日、PM7:00にアップします。

 

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2022年3月9日水曜日

「泣けない人」その4

4、Mission.1 下準備(1) 情報収集2

情報を集める!

数少なく、また、一方的に流れてくる豊治叔父さんのメッセージのみを元にアクションするには、心許こころもとない。

守叔父さんへ、直接、ショートメッセージを入れてみることにした。
 

 

「柑太郎です(^_^)/
ご無沙汰してます、お元気ですか?」
2021/11/22 16:44
 

 

以前ならば、ほんのチョッと待っただけで、電話が掛かってきた。のに、
 

 

30分経過、

1時間経過、

2時間経過、


 

なぜか、いくら待っても、そのショートメッセージへの返答は無かった。

豊治叔父さんの指示通り、めぐみ叔母さんへ連絡を取るべきか、守叔父さんへ、再度ショートメッセージを送信するか?

悩んでいるときに、ふと、ある事を思い出した!

守叔父さんは、二台の携帯電話を持っており、仕事用とプライベート用を分けていた。
先ほどは、そのどちらへメッセージ送信したのか、確認していなかったのだ。

送信先の番号を確認すると、仕事用の電話であった。

今日は、お仕事の休みの日かもしれない。
慌てずに、プライベート用の番号を確認し、ショートメッセージを送信した。

 

「守おじさま
お疲れ様です、ご無沙汰してます。
いかがお過ごしですか?
柑太郎です(^^)」
2021/11/22 18:57


 

30分経過、

1時間経過、

2時間経過、

4時間経過、



しかし、これまた同様に、いくら待ってもリアクションが帰ってこなかった。
いつのまにか、夜中12時を回っていた。

やはり、何らかのトラブルを抱えているのかもしれない。

引きこもりから若干だけ脱却した私には、トラブルを抱えているかもしれない人へ、直接電話するだけの勇気はなかった。
守叔父さんへ、直接電話を掛けることに躊躇ちゅうちょしてしまい、結局、一日を棒にしてしまう事となった。

(つづく)

 

本日、アップします。「泣けない人」その4

「泣けない人」その4

 

『4、Mission.1 下準備(1) 情報収集2』

 

本日、PM7:00にアップします。

 

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2022年3月2日水曜日

「泣けない人」その3

3、Mission.1 下準備(1) 情報収集

アクションするには、すなわち、行動するには、まず、「情報」が必要。

「守叔父さんの家にすぐ近づいてはいけない。」との言葉!が、一体、どういう事なのかを調べなければいけない。

そのような事を考えているときに、豊治叔父さんからメッセージが届いた。

携帯電話のショートメッセージで届いたものである。


「依頼は大田区に居る65歳の弟(君の守叔父さん)のことです。 私は、認知症と診断された妻の介護をしながら家事全般をやっているので様子見に行けません。 2年前からのコロナ禍で守の懸案問題も殆ど進展せずに連絡も途絶えています。 上京して守の家に寝泊して観察して貰いたいのです。 経費を振り込みますので宜しくお願いします。 詳細は電話します。」


「寝泊して」って書いてあるのに、家にすぐ近づいてはいけない???
なぜ・・・??????

疑問を抱えている最中に、電話が音と共に震え、次のメッセージが届いた。


「一応、めぐみ叔母さんにTELして確認して下さい。 又、今のところ建君からの連絡は有りません。」


めぐみ叔母さんは、アメリカのシアトル郊外に住む「私の母の妹」(七人兄弟の6番目)。守叔父さんのすぐ上の姉。
私にとっては、守叔父さんの次に、頭の柔らかい人であり、豊治叔父さんより、ずっと話し易い人。

めぐみ叔母さんの米国の家には、20年程前の事、2度訪れたことがある。一回目は、私一人で行き、1週間の滞在。二回目は、一回目の翌年(アメリカ同時多発テロ事件911のあった年)、私の母、私の祖母(母の母)を伴って、一か月半くらいホームステイをさせて貰った経験もある。

夫はスコットランド系アメリカ人、そして、三人姉妹の母親でもある。なので、私にはアメリカ人の叔父さんと、ハーフの従妹がいるって事になる。

長期間滞在させて貰ったおかげで、なぜ、米国へ移住したのか?など、めぐみ叔母さんの人生にかかわる事まで、色々な話をした事がある。そのため、気心の知れた間柄であり、母の兄弟姉妹の中で、一番、私の人生に影響を与えてくれている人だと思う。

そのめぐみ叔母さんへ電話しろって・・・?

そして、建(たてる)君とは、守叔父さんの二人息子のうちの長男である。その建君から連絡が無い?

この、続いて届いた2通のメッセージでは、より謎が深まっただけとなった。

(つづく)
 

本日、アップします。「泣けない人」その3

「泣けない人」その3

 

『3、Mission.1 下準備(1) 情報収集』

 

本日、PM7:00にアップします。

 

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