2022年5月25日水曜日

「泣けない人」その15

15、Mission.1 下準備(2) 物品調達2

ワイドバンドレシーバーを手に入れる事を考えつつ、他にも必要な物はないかと考え始めた。

そもそも、私のやろうとしていることは、なんだろう・・・?

守叔父さんの様子伺いと言う事がきっかけであるが、盗聴器を探す事が必要となり、ワイドバンドレシーバーを手に入れる事になった。普通に生活している者にとって、盗聴器など探す事なんて考えてもみないことだ。

盗聴器を使ったり、探したりする仕事とは?
 


スパイ?

探偵?

それとも、

刑事?
 


自分が、その役を演じると考え、その際に必要な物が七つ道具になるだろうと考える事としたのだ。

スパイ、探偵、刑事などの7つ道具とはナンだろう?

グーグルで、まず、「スパイ 7つ道具」を検索してみた。


・サイレンサー付きピストル
・仕込み銃付きアタッシュケース
・偽造パスポート
・変装道具
・盗聴器
・水で溶ける手帳(メモ帳)
・指から煙が出る粉
 

いきなり、ピストル!それも、サイレンサー付きの物。物騒なものが検索された。そんな非合法の物は、手に入れられないし、日本国内では、そこまで危険な事は無いだろう。同じく、仕込み銃付きアタッシュケースも不要。偽造パスポートも要らない。

変装道具!!!

守叔父さんの家の周辺を調べるために、何度となく周辺をうろつくことになる。何種類かの服装が必要となるだろう。

メモ帳は必要だろうが、水で溶ける必要はない。指から煙が出る粉とは・・・?


次に、「探偵 7つ道具」を検索してみた。
 


一昔前なら


・一眼レフ
・コンパクトカメラ
・メモ帳
・トランシーバーや無線機
・プリペイドカードの乗車券
・ボイスレコーダー
・発信機・受信機

 


現在では、

 

・ビデオカメラ
・アクションカム
・スマホ
・Suica等のICカード
・GPS端末
・予備バッテリー類
・時々、デジタル一眼レフ


一眼レフカメラが、ここでも出てきた!

飛行機を撮影するために使っていた望遠レンズと共に一眼レフカメラが役立つかもしれない。


「刑事 7つ道具」を検索すると、最初に検視のための7つ道具が出てきた。

「検視にはウエストポーチの臨場用カバンを持つ。中には七つ道具の透明のゴム手袋、マスク、ピンセット、綿棒、ペンライト、メジャー、温度計、頭や足のカバーなどが入っている。」との事で、今回、必要とされる物は、特に無い。


三つの職業の7つ道具を調べた事より、探偵になるつもりで、7つ道具を揃える事とした。

そのため、ワイドバンドレシーバーの他に、ペンタイプのボイスレコーダー、ペンタイプの小型カメラをそれぞれ購入する事とした。

(つづく)
 

2022年5月18日水曜日

「泣けない人」その14



14、Mission.1 下準備(2) 物品調達1


豊治叔父さんに言われた事として、守叔父さんは、誰かによって「監禁」、「脅迫」されている可能性がある。

電話での連絡が取れる理由で、監禁の可能性は低いと考えられるが、脅迫されている可能性はありうる。盗聴、盗撮によって監視され、脅迫されているかもしれない。

盗聴器を探す方法としては、専門業者に依頼するか、盗聴器を探す道具を手に入れる事のどちらかになる。

グーグルで、盗聴器を探す方法を検索してみた。

すると、ワイドバンドレシーバーの中に、盗聴器を探索する機能が備わっているものがあることを事を知った。


ワイドバンドレシーバー、、、。

この言葉には、多少の知識があった。

私が引きこもるチョッと前の趣味は、飛行機の撮影であった。自宅から鹿児島空港まで車で20分位。暇さえあれば、望遠レンズを付けたカメラと脚立をもって、出掛ける事が多かった。

鹿児島空港周辺の撮影ポイントには、休日となると、他にも飛行機の撮影をしている人が何人もいる。

その中には、片耳にイヤホンをしながら飛行機の撮影をしている人がいた。補聴器ってことはないな・・・?
一体、何を聞いているの?って聞いたら、飛行機と管制との会話の電波を聞いているんだって事!だった。

そして、その電波を受信するために使っていた装置がワイドバンドレシーバーであった。

当時、仕事を辞めて1年ちょっと経っていて、再就職するのもちょっと億劫で、空を見上げ、現実逃避していた頃の話である。

航空機で使用される電波には、いくつかの目的がある。それぞの空港から四六時中流れている気象情報や、飛行機に離陸許可を与えるもの、着陸許可を与えるもの、飛行中の進路を変更させたり、飛行高度を変えたりするものなど、その目的ごとに周波数を変え、飛行機と通信をしている。

航空写真マニアは、その着陸許可の電波や、離陸許可の電波をキャッチし、その飛行機の位置をイメージし、その方角へカメラを向けるのである。
四六時中流れている気象情報は、天気、風向き、気圧などとともに、その空港の使用滑走路の進入方向を知らせている。仮に一本の滑走路の空港があるとし、滑走路には二つの侵入経路があり、どちらの方向から侵入すれば良いのかを知らせているのである。

ワイドバンドレシーバーがどう言うものなのかわかったところで、盗聴器発見機能に関しての説明を少々。日本国内において、使用されている盗聴用の電波は、その周波数がほぼ決まっているらしく、それらの周波数を優先的に探すモードがあるって事である。

盗聴器発見モードには、大きく分けて2種類あり、一つ目は、盗聴電波があるか無いか?
二つ目は、どこに設置されているかを見つけるモードの二種類となる。
電波を探しつつ、ブザー音を発生させる!
このブザー音を受信した盗聴器が発生する電波を拾い、その音とブザー音の干渉させる事によってハウリングをおこし、そのハウリングを起こす方向に盗聴器があるって事になる。


これらの盗聴器を探索する機能の付いたワイドバンドレシーバーを買う事とし、専門業者に依頼しないこととした。
そして、このワイドバンドレシーバーを上手く活用するために、望遠レンズ付きのカメラが役に立つこととなる。

(つづく)
 

2022年5月11日水曜日

「泣けない人」その13

13、Mission.1 下準備(1) 情報収集11

めぐみ叔母さんとの会話は、久しぶりだった。
よくよく思い出してみると、前回の連絡は、一年以上前だった。
守叔父さんの話を聞き出す前に、お互いの近況報告にだいぶ時間を費やすこととなった。

どの様にダイエットしたのか、どのくらい運動したのかなどの話から始まって、それぞれの家族の様子などの話が続いた。

めぐみ叔母さん夫妻は、共に米国の年金の貰える年齢になったとの事。年金受給の手続きを始める事となったことを知った。

守叔父さんは、めぐみ叔母さんの三歳下。65歳を超え、同じく年金を貰える年齢に達しているな・・・。


途中、一度のトイレ休憩を挟み、トータル3時間ほどのビデオ電話となった。


守おじさんとの最近の電話連絡において、うまく会話が成り立たないとのことであった。
私は、誰ですか?との問いかけに、“めぐみ“との名が返ってこないみたいである。

確かに、僕が電話した時にも、“柑太郎”の言葉は無かったな・・・。
以前ならば、こちらから電話した際、“どうした柑太郎君”、“柑太郎君、元気にしてる?”などと、名前を呼んでくれていたのに・・・。

めぐみ叔母さんによると、姉からの電話である事は、理解できているようだ。が、名前が出てこない。と言うこと。

生活状況が気になるので、ビデオ電話を用いて、部屋の様子を見せて貰おうとしたけど、うまく見せてもらえない様子。わざと、見せないようにしているのか?それとも、操作がうまくできないのか・・・?
そして、部屋が薄暗い感じとの事。


電話による確認だけでは心配となり、豊治叔父さんに連絡したとの事であった。


そして、次のような言葉を何度か繰り返し、話しているようだった。

「安西(あんざい)に騙された。騙された。安西に騙されて、引越しさせられた。」
「安西は、銀行の通帳とハンコ、カードを返さなかった。警察に逮捕させなければならない。」
「騙されて、お金を取られた。百万円を毎月、取られたのに返してくれない。」


僕は、以前、認知症を患っている別の叔父さんと話をしたことがある。その叔父さんは、なんらかのきっかけでゴルフの話をはじめる。その後、話題が変わって別の話をしていても、なんらかのきっかけで、またゴルフの話をはじめる。つい先ほど話をした事と全く同じゴルフの話を繰り返すのだ。お酒の席で、同じ事を繰り返して話をする人が居るのと似ている。話している本人は、先ほど話をした事を忘れているため、同じ内容の話を繰り返して話すのである。

守叔父さんも、認知症のため同じ話を繰り返すのか? それとも、切実に訴えるため同じ話を繰り返すのか、現状では判断できないが、認知症の可能性は高いと思われる。

話の中に出てきた「安西さん」という名前は、聞いたことがあった。

三年前に、守叔父さんが株式会社を立ち上げる際に、共同経営者として一緒に仕事をしていた人であり、愚痴と共に何度も聞かされた名前であり、わずかに記憶があった。

当時の問題が、三年経ったのにもかかわらず、今も残った状態なのだろうか?
認知症によって解決できなかったのか?それとも、認知症による妄言なのか?


こんな時には、最悪の状況を予想し、対策を立てなければならない。
守叔父さんは、一体、どういう状況にあるのか?

一応、めぐみ叔母さんと会話があり、僕も会話できた。
電話を掛けることはできる。が、会話がおぼつかない。

それらの数少ない情報によって、守叔父さんは、認知症かもしれないし、認知症ではないかもしれない。認知症ではないとすると、何らかの精神的な圧力を受けているのかも知れないと想像した。安西さんによるものかもしれないし・・・。

「監禁」されているのか・・・?
何らかの「脅迫」を受けているのか?

行った事の無い自宅への訪問。そして、もしかすると監禁されているかもしれない。そんな守叔父さんへのアプローチ!とは、一体どうすれば良いのだろう。

アプローチ方法を悩みつつ、めぐみ叔母さんが、心配していることをまとめてみた。
次の4点となった。


1.健康状態の確認(メンタル、フィジカル両面)
2.生活費の状況、家賃、食事等、電気ガス水道料金の支払い等 年金、健康保険など 
3.安西さんとの日常生活の関わり具合、関係性の確認 
4.守叔父さんの会社の状況、名義は誰か? 資金の動き有るか無しか?


めぐみ叔母さんとの話を元に、豊治叔父さんへ連絡を入れた。
豊治叔父さんへ、めぐみ叔母さんからの聞き出したことをまとめ報告したのは、午後4時であった。

私は、過去三年間で、守叔父さんの仕事、会社がどの様になっているかは、理解しておらず、安西さんとのつながりに関しても、よく分からなかった。
豊治叔父さんから、守叔父さんの会社についての何らかの連絡があることを期待して、返事を待つこととした。

三時間位待って、豊治叔父さんからの連絡が届いた。


豊治叔父さんの知るところでは、守叔父さんの会社は、資本金のトラブルにより、安西さんに乗っ取られそうになった模様。そのため、豊治叔父さんの雇った弁護士により、会社を休眠にしたとの事。つまり、トラブルは一応、解決しているとの事だった。

安西さんは、愚痴の範囲でなく、敵対する存在のようである。
トラブルは、解決しても、守叔父さんの仕事は、その後、どうなったのだろう? 会社を休眠させたと言う事は、別の仕事に就いたのか・・・?

疑問は残るが、めぐみ叔母さんの心配事項の4番目はとりあえず、解決していると思われる。
ともかく、健康状態の確認が1番目であり、本人に会い、病院へ連れていく事が最重要ポイントとなりそうだ。

豊治叔父さんへ、次のメッセージを送信し、上京予定を考え始めた。

 


 

「承知しました(^_^)/ めぐみ叔母様
も、心配してました。 どうにかし
て、病院へ連れて行ければと思いま
す。」
2021/11/23 18:57
 

 


守叔父さんを病院へ連れていく事を目標として、その前にたちはだかる問題をどの様に解決するか?
悩みは残っているが・・・。

(つづく)
 

 

2022年5月4日水曜日

「泣けない人」その12


12、Mission.1 下準備(1) 情報収集10


今から三年程前の話。

私が引きこもりから抜け出して、仕事に就いて半年ほど経った頃、守叔父さんから電話が掛かってきた。

10年ぶりの会話であった。

守叔父さんは、いつの間にか、運送業を自ら立ち上げ、社長をしているとの事!

私が最後に会話した時は、運送会社の社員であり、サラリーマンであった。
10年の間に、独立し、起業していた事になる。

サラリーマン時代に得た人脈を活用し、大手の運送会社から仕事を貰い、大田区、港区を中心に営業しているようであった。

守叔父さんの話では、少し変わった営業方法で、トラック1台につき二人の体制。ツーマンとか、横ノリと呼ばれる手法を採用しているようだった。

この手法では、駐車禁止の場所に車を停車させる事ができるので、駐車する場所を探す手間が軽減され、効率的な面があるらしい。また、配送先に都合に合わせたオプションサービスが設定できるとの事で、仕事の単価をアップできるようだ。

細かい事までは、聞かなかったが、重宝される存在となり、それなりの仕事があるらしい。

元々は、駐車禁止が厳しく取り締まられるようになった昨今、その対策として、苦肉の策として、助手席に補助者を乗せる事がきっかけであったようだ。

守叔父さんが、久しぶりに電話を掛けて来た理由は、私の事を心配してくれていた事にもあるが、もう一つの理由としては、事務仕事が苦手らしく、私に事務全般の仕事を手伝って欲しいとの事でもあった。
つまり、一緒に働かないかとの、お誘いであった。

10年前にUターンで鹿児島に戻り、田舎の空気を吸って生きているものにとって、再び、都会での人込みに紛れて生きていく事には躊躇し、ハッキリとした返答を控えていた。

その後、数度の連絡があり、チョッとずつ、会社内でトラブルを抱えている事を聞かされ始めた。そして、その解決をして欲しいと言う事であった。
順調に回っている会社を手伝うのならともかく、上京すること自体を躊躇している私にとって、トラブルを抱えた会社を手伝う事は、よりハードルが高くなることになる。

守叔父さんの説明では、どの様なトラブルなのか、イマイチ理解できなかった。そして、守叔父さんは、兄の豊治叔父さんに助けを求めているようだった。

そのため、別途、豊治叔父さんに状況を聞いてみる事にした。

豊治叔父さんによると、会社を株式会社へ移行する作業の際、資本金をいくらに設定するかどうかで、モメたのが最初のトラブルのようだ。

現在、株式会社は資本金1円でも設立できる。

守叔父さんの考えでは、100万円~300万円程度の自己資金を元手に、資本金としたかったようだが、一緒に起業しようと手伝ってくれる共同経営者には、1000万円必要だと言われ、対立してしまったようだ。

豊治叔父さんは、会社の株式会社化の目的は、その共同経営者が、出資金を詐取するために、増額しようとしているのではないかと不信感を持っている様だった。

その様な、リスクのある会社ならば、なおさら、遠慮しようと思い、誘いの返答を控えていた。

その後、何度か、守叔父さんからの電話があり、共同経営者の名前とともに、その人の愚痴を聞かされることが続いた。

幸か不幸かどちらかわからないが、東京へ行こうか、行かないかを決めかねているときに、私は大腸検査において、とある病気が見つかり、闘病する事となった。そのため、上京し、守叔父さんの仕事を手伝う事はできなくなった。

豊治叔父さんも、仕事のトラブルは、守叔父さん本人が解決すべきことだと言って、私が手伝う事は必要ないと言ってくれた。

それから、約三年が日々が過ぎ、現在となる。


(つづく)