2022年5月11日水曜日

「泣けない人」その13

13、Mission.1 下準備(1) 情報収集11

めぐみ叔母さんとの会話は、久しぶりだった。
よくよく思い出してみると、前回の連絡は、一年以上前だった。
守叔父さんの話を聞き出す前に、お互いの近況報告にだいぶ時間を費やすこととなった。

どの様にダイエットしたのか、どのくらい運動したのかなどの話から始まって、それぞれの家族の様子などの話が続いた。

めぐみ叔母さん夫妻は、共に米国の年金の貰える年齢になったとの事。年金受給の手続きを始める事となったことを知った。

守叔父さんは、めぐみ叔母さんの三歳下。65歳を超え、同じく年金を貰える年齢に達しているな・・・。


途中、一度のトイレ休憩を挟み、トータル3時間ほどのビデオ電話となった。


守おじさんとの最近の電話連絡において、うまく会話が成り立たないとのことであった。
私は、誰ですか?との問いかけに、“めぐみ“との名が返ってこないみたいである。

確かに、僕が電話した時にも、“柑太郎”の言葉は無かったな・・・。
以前ならば、こちらから電話した際、“どうした柑太郎君”、“柑太郎君、元気にしてる?”などと、名前を呼んでくれていたのに・・・。

めぐみ叔母さんによると、姉からの電話である事は、理解できているようだ。が、名前が出てこない。と言うこと。

生活状況が気になるので、ビデオ電話を用いて、部屋の様子を見せて貰おうとしたけど、うまく見せてもらえない様子。わざと、見せないようにしているのか?それとも、操作がうまくできないのか・・・?
そして、部屋が薄暗い感じとの事。


電話による確認だけでは心配となり、豊治叔父さんに連絡したとの事であった。


そして、次のような言葉を何度か繰り返し、話しているようだった。

「安西(あんざい)に騙された。騙された。安西に騙されて、引越しさせられた。」
「安西は、銀行の通帳とハンコ、カードを返さなかった。警察に逮捕させなければならない。」
「騙されて、お金を取られた。百万円を毎月、取られたのに返してくれない。」


僕は、以前、認知症を患っている別の叔父さんと話をしたことがある。その叔父さんは、なんらかのきっかけでゴルフの話をはじめる。その後、話題が変わって別の話をしていても、なんらかのきっかけで、またゴルフの話をはじめる。つい先ほど話をした事と全く同じゴルフの話を繰り返すのだ。お酒の席で、同じ事を繰り返して話をする人が居るのと似ている。話している本人は、先ほど話をした事を忘れているため、同じ内容の話を繰り返して話すのである。

守叔父さんも、認知症のため同じ話を繰り返すのか? それとも、切実に訴えるため同じ話を繰り返すのか、現状では判断できないが、認知症の可能性は高いと思われる。

話の中に出てきた「安西さん」という名前は、聞いたことがあった。

三年前に、守叔父さんが株式会社を立ち上げる際に、共同経営者として一緒に仕事をしていた人であり、愚痴と共に何度も聞かされた名前であり、わずかに記憶があった。

当時の問題が、三年経ったのにもかかわらず、今も残った状態なのだろうか?
認知症によって解決できなかったのか?それとも、認知症による妄言なのか?


こんな時には、最悪の状況を予想し、対策を立てなければならない。
守叔父さんは、一体、どういう状況にあるのか?

一応、めぐみ叔母さんと会話があり、僕も会話できた。
電話を掛けることはできる。が、会話がおぼつかない。

それらの数少ない情報によって、守叔父さんは、認知症かもしれないし、認知症ではないかもしれない。認知症ではないとすると、何らかの精神的な圧力を受けているのかも知れないと想像した。安西さんによるものかもしれないし・・・。

「監禁」されているのか・・・?
何らかの「脅迫」を受けているのか?

行った事の無い自宅への訪問。そして、もしかすると監禁されているかもしれない。そんな守叔父さんへのアプローチ!とは、一体どうすれば良いのだろう。

アプローチ方法を悩みつつ、めぐみ叔母さんが、心配していることをまとめてみた。
次の4点となった。


1.健康状態の確認(メンタル、フィジカル両面)
2.生活費の状況、家賃、食事等、電気ガス水道料金の支払い等 年金、健康保険など 
3.安西さんとの日常生活の関わり具合、関係性の確認 
4.守叔父さんの会社の状況、名義は誰か? 資金の動き有るか無しか?


めぐみ叔母さんとの話を元に、豊治叔父さんへ連絡を入れた。
豊治叔父さんへ、めぐみ叔母さんからの聞き出したことをまとめ報告したのは、午後4時であった。

私は、過去三年間で、守叔父さんの仕事、会社がどの様になっているかは、理解しておらず、安西さんとのつながりに関しても、よく分からなかった。
豊治叔父さんから、守叔父さんの会社についての何らかの連絡があることを期待して、返事を待つこととした。

三時間位待って、豊治叔父さんからの連絡が届いた。


豊治叔父さんの知るところでは、守叔父さんの会社は、資本金のトラブルにより、安西さんに乗っ取られそうになった模様。そのため、豊治叔父さんの雇った弁護士により、会社を休眠にしたとの事。つまり、トラブルは一応、解決しているとの事だった。

安西さんは、愚痴の範囲でなく、敵対する存在のようである。
トラブルは、解決しても、守叔父さんの仕事は、その後、どうなったのだろう? 会社を休眠させたと言う事は、別の仕事に就いたのか・・・?

疑問は残るが、めぐみ叔母さんの心配事項の4番目はとりあえず、解決していると思われる。
ともかく、健康状態の確認が1番目であり、本人に会い、病院へ連れていく事が最重要ポイントとなりそうだ。

豊治叔父さんへ、次のメッセージを送信し、上京予定を考え始めた。

 


 

「承知しました(^_^)/ めぐみ叔母様
も、心配してました。 どうにかし
て、病院へ連れて行ければと思いま
す。」
2021/11/23 18:57
 

 


守叔父さんを病院へ連れていく事を目標として、その前にたちはだかる問題をどの様に解決するか?
悩みは残っているが・・・。

(つづく)
 

 

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