2024年7月3日水曜日

「泣けない人」その109



109 、上京五日目.6


守叔父さんは仕事には行かないので、今日も私をどこかに連れて行ってくれるようだ。

さて、何処に行くのだろう?

クルマで出掛けるようだ。

私が乗車すると、行き先も告げずに出発した。

少し走った後に信号待ちのタイミングで、守叔父さんはクルマのインパネ(スピードメーター、エンジン回転計)の辺りを指差しながら、
 

 

「ココデ、ヒャクマン、
ココデ、ニヒャクマン、
ニヒャクマン、ダメ!」
(ここで、100万、
ここで、200万、
200万、ダメ!)

 


と言った。

私は、インパネに顔を近づけて、守叔父さんが何を指差しているのかを確認すると、それは燃料計であった。

ガソリンタンクの残量によって、100万とか200万とか言っていることが分かったが、 200万がダメとは何だろう?

そして、

 

 

「サムイネ! ホラ、ナナジュウド!」
(寒いね! ほら、70度)

 


と言った。私が、
 

 

「70度って、何?」

 

 

と聞き直すと、再度、インパネを指差して、

 

 

「ココ!」
(ここ!)

 


と言った。

インパネには外気温の表示があり、「7.0℃」との表示があった。

「ナナド」と言うべきところを「ナナジュウド」と言ったのであった。

そんな不思議な会話をしているうちに、クルマが停車した。

 

 



 

 

セルフ式のガソリンスタンドに着いていた。

守叔父さんは慣れた手つきで、ガソリンを給油しはじめた。

スタンドの計量器には、給油量(リットル)とともに、料金が表示されており、その数字がどんどん増えていった。

給油を終えて、守叔父さんは計量器の金額を指差しながら、

 

 

「ヒャクマンデショ!」
(100万でしょ!)

 

 

と言った。

実際にそこに表示された金額は、1万円を少し超えただけのものであった。

先ほど、信号待ちをしている際に燃料計を指差しながら「ヒャクマン」と言ったのは、その示している残量の時に給油すると燃料代が「1万円」掛かるとのことのようだ。

燃料タンクがほぼ空になってから給油すると「2万円」掛かるのだろう。そのことを同じように「ニヒャクマン」と言ったこととなる。

さすが、ベンツの燃料タンクは大きいな!と感心しつつも、「1万」「100万」「2万」「200万」と言う守叔父さんには参ってしまった。

「気温7.0度」「気温70度」と言い、「1万」「100万」と言う。

それぞれの「桁」を間違った表現は、冗談を言っているのではなく、単に間違っている事は明白であった。

数字の桁を間違える人が、本当に仕事ができるのだろうか?

ますます、守叔父さんが何の仕事をしているのかが疑問となった。

(つづく)

 

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