112 、上京五日目.9
上野公園と言えば、「西郷隆盛(さいごうたかもり)像!」
西郷隆盛は、言わずと知れた幕末の志士。鹿児島を代表する英雄の一人である。
このままの路順で駐車場へ戻れば、その銅像を見ることはできない。
せっかく上野公園を訪れたのにもかかわらず、「西郷隆盛像」を拝見せずして帰るのは、鹿児島県人の私としては耐え難かった。
素直に、「西郷さんを見に行こう!」と言えば良いところだが、私はそう言えなかった。
なぜなら、守叔父さんの口ぐせのごとき、「ワ・カ・ラ・ナ・イ」という言葉が戻ってくるかもしれない事を恐れたからだ。
鹿児島出身の守叔父さんが、「西郷さん」を分からない事など無いだろう。 もしも、「ワ・カ・ラ・ナ・イ」と言われると、私は自分自身が相当なショックを受けると予想した。
そのため、「西郷さんを見に行こう!」とは言わず、
「別のルートで戻ろうよ!」
と守叔父さんに伝えた。
私の心の中の葛藤など気付くはずもなく、守叔父さんは笑顔で、
「オッケー!、ドッチイク?」
(OK!どっち(に)行く?)
と言いながら、指先を左右に振ってくれた。
私が、銅像のある方面を指差すと、
「オッケー!」
(OK!)
と言って、守叔父さんはその方向へ淡々と歩き始めてくれた。
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途中に30段程の石階段があった。守叔父さんは、軽々とその階段を駆け上がっていった。
息もほとんどあがっておらず、体力・元気が有り余っているようで、15歳差の私より守叔父さんの方がよっぽど肉体的にはパワーがありそうだと感じた。
守叔父さんは、見た目だけでなく、体力も同世代の中では抜きんでていると確信できるものであった。 運送業で体を鍛え続けてきたおかげなのだろう。
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しばらく歩くと、西郷隆盛の銅像の前に着いた。
守叔父さんは銅像を見上げて、まじまじと観た後に私を振り向き、尋ねるような感じで、
「コノヒト、
◯◯◯◯◯ノヒト
ダヨネ!?」
(この人、
◯◯◯◯◯の人
だよね!?)
と言った。
その言葉は、私の予期せぬものであり、大きなハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けたように感じた。そして、その言葉が何度も頭の中でリフレインしていた。
「◯◯◯◯◯の人」、「◯◯◯◯◯の人」、「◯◯◯◯◯の人」、、、、。
いく度のリフレインを繰り返したか分からないが、再度、冷静にその言葉を反すうした後、私は心の中で「エーーーー!」と大声で叫んでいた。
(つづく)
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