2024年11月27日水曜日

「泣けない人」その126

 

126 、上京六日目.7


浮島町公園の最寄りの駐車場は、高速道路浮島入口の手前の交差点を右折するとすぐ見つかった。

駐車料金は4時間で千円であり、公園でのんびりできる料金であった。

駐車場を出て公園へ向かい歩み始めると、すぐに飛行機の到来があったため、私と守叔父さんは、

 

「ウヮー、キター!」
(うゎー、来たー!)

 


「うゎー、来たー!」




と、ともに声を挙げることになった。

100メートル程歩き、交差点の横断歩道を渡ると浮島町公園の入口に到着した。

入口の看板には、「海風の森 川崎区市民健康の森(浮島町公園)」と記されていた。

公園の入口付近は木が多く立ち並んでおり、視界が悪かったが、歩み進めるとすぐに広々とした光景にたどり着いた。

多摩川河口から東京湾に海が広がり、その水景の先に羽田空港が見えた。



守叔父さんは歩きながら、

 

「キタ、キター!
マタ、キター!」
(来た、来たー!
また、来たー!)



と何度も何度も、遠くを指差して興奮していた。

目を凝らして、その指先の指す方を見ると、着陸態勢の飛行機が複数近づいているのを見つけることができた。

よく見ると、ほぼ同時に着陸するような接近であった。
 
羽田空港には4つの滑走路があり、平行する滑走路があるため、同時に着陸することができるようだ。

機体がどんどん近づき、最接近した後、少し離れたところで着陸する様子が見られた。

私はカメラを取り出し、飛行機の撮影を始めた。

次から次に飛来するそれぞれの機体を狙って撮影した。

飛来する飛行機が途切れた時に、撮影したものを見直していると、同じフレームに別の機体が写り込んでいるものがみつかった。



駐機中の飛行機ならば同じフレームにたくさんの飛行機を入れて撮影することができるが、一枚の写真に飛んでいる飛行機を複数機入れることは難しいだろう。

たまたま運よく撮影されたものではあったが、私にとって初めての経験であったため、内心非常に興奮していた。



複数機写っているのを見つけて以来、意識して同じフレームに複数の機体を入れて撮影することにチャレンジしはじめた。

そのチャレンジに集中し、完全に自分の世界に入り込み、撮影に集中する時間が続いた。

そして、遂に同時に「3機」飛行している写真を撮影することができた。



心の中で「やったー!」と叫んでいるときに、守叔父さんの「カエロウ!(帰ろう!)」という言葉が耳に入ってきた。

すでに、写真を撮影しはじめてから1時間が経過していた。

「同時に3機」の撮影ができたことにより満足できたので、素直に「帰ろう!」と相づちをうった。

守叔父さんもたくさんの飛行機を見ることができて満足できたようで、

 

「スゴイネ!、スゴカッタネ!」
(凄いね!、凄かったね!)



と言った。

(つづく)
 

2024年11月20日水曜日

「泣けない人」その125

 

125 、上京六日目.6

産業道路(国道131号線)を南下して、浮島町公園に向かっている。公園は宿から7km位の道のりであり、クルマならば15分程度で行ける場所である。

月曜日に病院へ行くためには、守叔父さんの予定を聞かなければならない。

今日の目標は、守叔父さんの月曜日の予定を聞き出し、予定がある場合は、その予定を別日に変更可能かどうかを確認しなければならない。

守叔父さんの運転中の状態で、月曜日(明後日)の予定を聞いてみた。

すると、

 

「ゲツヨウビ、オレ、
マタ、イカナイトイケナイ。」
(月曜日、俺、
また、行かないといけない。)



と言った。 今朝、行ってきたと言う「カイロ」に月曜日も行くのだろうか?

仕事は、火曜日〜金曜日と言っていたので、仕事ではないだろう。

 

「何時に行くの?」



と聞くと、
 

「クジカラクジハン。」
(9時から9時半。)


と返事が返ってきた。 用事自体は30分程度の用事なのだろう。

 

「あのさ、守叔父さん、
腕の事、気にしてたでしょ。」



と伝えた。

 

「ナニガ? ワカンナイ。」
(何が? 分かんない。)

 

 

と返事が戻ってきた。 守叔父さんの腕の「シミ」辺りを指差して、

 

「ココを気にしてたでしょ!」



と伝えた。 すると、

 

「アア、ココネ!」
(ああ、ココね!)



と思い出してくれた。

 

「どうしたら、治せるか調べてみたんだよね!
そうしたら、いいところが見つかったんだよね!
叔父さんの家の近くで相談に乗ってくれる
ところが見つかったんだよね!
月曜日の朝9時に行けばね。」



と伝えた。しかし、イマイチ、運転中の叔父さんは私の言葉をうまく理解できていないようだった。つづけて、

 

「そこの先生が、すごく良く話を
聞いてくれるみたいなので、
相談してみたら良いよ。
健康診断も受けてないでしょ。
健康診断受けたら、
どうやったらそれを治せるか、
分かるみたいだよ。」



と伝えた。すると、

 

「ゼーンブ、ヤルト
ワカルンダ!」
(全部、やると
分かるんだ!)



と私の話を理解してくれたようだった。 続けて、

 

「カラダガドンドン、
ヨクナルンダ!」
(体がどんどん、
良くなるんだ!)



と前向きな言葉が返ってきたので、

 

「叔父さんが良ければ、
行ってみない?」




と伝えると、

 

「クジカラジュウジハダメダケド、
ジュウジカラナライイヨ。」
(9時から10時はダメだけど、
10時からなら良いよ。)



と返事が返ってきた。 病院の予約は9時ではあるが、遅れても大丈夫ですと言われているので、問題はないだろう。 

 

「では、10時に行ってみようね!」



と伝え、それ以上は念押ししなかった。

その時、ちょうど、浮島町公園に到着した。

(つづく)
 

2024年11月6日水曜日

「泣けない人」その124

 


124 、上京六日目.5

豊治叔父さんからのメッセージによって、疑問が増えたが、会社のトラブル云々の前に、ともかく、病院へ連れていく事が最優先である。

2年前に、守叔父さんの意思が強くて病院へ行かなかったとするならば、今回も病院へ行く事は難しいことになることも予想される。

私より歩くのが早く、体力もある守叔父さんを無理やり病院へ連れて行く事はできないだろう。 

守叔父さんの意思を変えて、病院へ行かせるしかない。そのためには時間がかかることになるかもしれない。 少しだけ、言い訳的なメッセージを豊治叔父さんへ送信することにした。 

 

「自分が若く見える事が、現在の守叔
父さまの自尊心を守っている状況で
す。そのプライドを傷つけると、一
挙に老け込んでしまうのではないか
と心配しており、なるべく、傷つか
ない状況を作れることを希望して行
動しているので、少し、まどろっこ
しく感じるかもしれませんが、ご容
赦くださいませ。 脳の話しは、豊
治叔父さまからの連絡分は、良く理
解しております。 認知に関して
も、以前1年前、グループホームで
働いた経験が役に立っています。」
2021/12/04 10:19



送信したのち、時刻を確認すると守叔父さんとの待ち合わせ時間の10分前であった。

慌てて外出の準備をしていると、守叔父さんから電話が掛かってきた。

電話にでると、守叔父さんはすでに私の宿の前に到着しているとの事。

急いで部屋を出ることになった。

さて、今日はどこに行くのだろう・・・?

1階に降りると、フロントの正面にシルバーの守叔父さんのクルマが停まっていた。

私は、大きめな声で
 

「おはようございます!
待たせてごめんなさい。」



と声をかけたあと、クルマに乗り込んだ。

守叔父さんは笑顔で、
 

「イヤネ、ムコウカラネ、
キョウ、ニチヨウビダッタカラ、
クルマガゼンゼン、
アレナイカラ、ハヤカッタ。」
(いやね、向こうから、
今日、日曜日だから、
クルマが全然、
あれ無いから早かった。)


と言った。 交通渋滞が無かったから早く着いたという事だろう。

私が「そうだったんだ。」と相づちを打つと、すぐに、
 

「ドコイク?」
(どこ行く?)


と私に聞いてきた。 私の行きたい所に、連れて行ってくれるようだ。

私はすぐに、行きたい所「浮島町公園」を思いついた。

3日前に「浮島町公園」の近くまで連れて行って貰ったけれど、駐車場が分からずに行けなかった場所である。 

再度調べると、駐車場が近くにあることが分かっていた。

「浮島町公園」と言っても伝わらないと思い、

 

「ボウリング場の交差点を左に行くところ、
駐車場があるみたい!
飛行機を見に行こう!」


と伝えると、

 

「アア、アソコ、
ワカッタ。」
(ああ、あそこ、
分かった。)


と、すぐに行き先を理解して、クルマを発進してくれた。

(つづく)