16.上京八日目.16
守叔父さんが認知症であると診断され、そのショックのため、しばらく医師の声を上の空で聞いていたが、徐々に自分を取り戻していた。
今後の対応として、病院から地域包括支援センターへ連絡を入れてもらえるのかどうかと確認すると、個人情報保護の問題で、病院からの連絡はできないとのことであった。
私自身で、支援センターへ行き、病院での診断結果を説明しなければならないようだ。
診断結果を正しく説明するために、診断書があれば良いだろう。
医師は、
「診断書は必要なら作成しますけど、
(支援センターへの)相談には必要ないです。」
と言った。代わりに、相談時に伝える必要のある情報を整理し、
「認知力検査は30点満点で5点。
高度認知症。
CTで脳が萎縮していることを確認。
前頭側頭型の認知症。
と(包括支援センターに)伝えてください。」
と医師が言った。 続けて、
「言葉が難しくて、説明が難しいと思いますが、、、。」
との医師の言葉。
私には聞き慣れない言葉は、なかなか覚えられない。 CT画像と同じように、カルテの写真があればな・・・。と思い、カルテを指差して、
「(カルテの)この部分の写真を撮って良いですか?」
と聞くと、
「ああ、良いですよ!
そうですね、
写真があれば、
(診断書が無くとも、)
説明ができますね!」
と快諾してくれたので、スマホで撮影することにした。
スマホを取り出した手は、震えていた。
手ブレを少なくするために、呼吸を整えて、ゆっくりとシャッターを切った。
無事にカルテの撮影ができると、包括支援センターでの説明が容易になると考え、心に少しの余裕ができた。
すると、ふと、昨日の事を思い出した。
昨日、一昨日は、守叔父さんの家の中を家探しして、いくつかの書類を見つけたのだった。
その中の書類について、
「叔父さんの家で、
税金関係の書類を見つけました。
税金の納付催促の通知が、
たくさん届いており、
多額の税金滞納があることがわかりました。」
と医師に伝えた。
医師は、
「税務署は嘘つかないから、
金銭トラブルがあるのは事実でしょう。
診た限りでは、(医師の判断として、)
本人には、(税金の)支払い責任能力が無い。
役所に相談した方が良いですね。
そうじゃなきゃ、借金を背負うことになる。」
と言った。
確かに、認知症という病気によって金銭的にプラスになる事よりマイナスになるリスクの方が高いだろう。
包括支援センターだけではなく、税務署などの役所にも相談が必要だな・・・。と、今後の対応が多岐に及ぶことを理解した。
医師としてのアドバイスは、出尽くしたようであり、守叔父さんに関わる一連の診察がすべて終わったことになった。
(つづく)