14.上京八日目.14
守叔父さんの指差す先を、医師はまじまじと見ていた。 しかし、そこに異常を見出せないでいた。
まさか、「シミ」の相談を受けるとは思いもしていないだろうから・・・。
医師は、
「どこも悪そうに見えないけど?」
守叔父さんは、
「ココ、
ココ、
ココガ、
ナンカ、
ヘンナノガ、
イッパイ
オカシイノ。」
(ココ、
ココ、
ココが、
何か、
変なのが、
一杯、
おかしいの。)
と執拗に言った。
しかたなく医師はもう一度、守叔父さんの腕を見直した。
まさか・・・という表情で、
「このシミの事?」
と医師が言うと、守叔父さんは、
「ソウ!」
(そう!)
と答えた。 医師は、少し呆れた表情をしつつも、丁寧に、
「歳とったからシミができてるの。
みんな歳をとると出来るの。
大丈夫。 心配ない。
誰でもあるよ。
歳とるとシミはできるから。
心配ない。
大丈夫よ。」
と言った。 守叔父さんは納得せずに、
「イヤ、ナンカ、
コウイウノヲ、
チャントシテ、
チュウシャ トカ、
ナンカシテ、
キレイニ
ナリマスヨッテ、、、。」
(いや、なんか
こういうのを、
ちゃんとして、
注射とか、
何かして、
綺麗に
なりますよって、、、。)
と、「シミ」の治療法があるはずと伝えようとした。
医師は、少し柔和な表情になり、笑い声を発しながら、
「それは、もう、今、歳なんだから。
もう、それは、無駄な抵抗はしなくていい、
男なんだから・・・。」
と言った。
「ソウナノ?
デモ、オレ、ヒョットシタラ、
アンタ、サンジュッサイ トカ、
ニジュウハッサイ トカ、
ジッサイハ ロクジュウ ゴサイ。
コレ、アルト、、、。
ナイト、サンジュッサイ トカ、
ニジュウハッサイ トカ、
イワレル。」
(そうなの?
でも、俺、ひょっとしたら、
あんた、三十歳とか、
二十八歳とか、
実際は六十五歳。
コレ有ると、、、。
無いと、三十歳とか、
二十八歳とか、
言われる。)
と言った。
守叔父さんは、自分が周囲の人から若く見られたいという欲求を一生懸命に伝えようとしていたのだった。
医師は守叔父さんのジョーク話しと捉えたようで、ひと笑いした後、
「はい、大丈夫!」
と言って、診察を切り上げた。
医師の表情には、「シミ」より別の問題、大きな問題があるでしょう・・・。と
言いたそうな雰囲気が滲んでいたけれど、さすがに、言葉にはならなかった。
代わりに、
「お疲れさまでした。
診察が終わりました。
この後、甥御さんとの話しがありますので、
しばらく、待合室でお待ちください。」
と、少し冷ややかな事務的な口調で言った。
守叔父さんは、少し不服そうな顔をしていたけれど、医師の指示に従って、診察室から出ていった。
(つづく)
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