15.上京八日目.15
守叔父さんが診察室から出ていくと、医師はすぐに話し始めた。
「見ての通りですね。
(認知機能検査は、)
30点満点の5点ですね。
高度の認知障害ですね。
かなり認知症がひどいですね。
とてもじゃないけど運転なんか
怖くてさせられないですね。」
と言った。 30点満点の検査で得点はわずかの5点。
脳のCT検査の結果が先に説明されており、脳の萎縮がひどい事が分かっていたものの、口頭による問診が始まる直前までは、これ程ひどい点数になるとは想像していなかった。
なぜなら、守叔父さんは、クルマをスムーズに操作し、目的地に移動することができる能力があり、クルマの運転は、簡単な事ではないと思っていたからだ。
しかしながら、問診の最中、守叔父さんの誤答が一つ、二つ、・・・。と徐々に積み重なることによって、どんどんと「認知症」の可能性が高くなり、また、その深刻度が高いことが判明していった。
医師の口から「認知症」という確定診断が出て、実際にその言葉を聞くと、体は言う事が利かなくなって、自然とむせび泣いていた。
私は心では冷静さを保とうと必死にもがいていたのだけれども・・・。
目頭からは涙が溢れて流れ落ち、くちびるの横を伝わりさらに下に流れてアゴから垂れ落ちそうになっていた。
慌ててポケットからタオルハンカチを出して涙を拭った。
医師は、
「おつらいでしょうけれどね・・・。」
と労(いた)わってくれた。 続けて、残念そうに、
「(医師としては、治療の方法が無く)
何もしてあげることができない。」
と言った。
そして、私が落ち着くために、少し時間をあけた後、
「年齢はぎりぎり65歳。
若年性認知症は65歳未満。
発症時は、若年と推測。」
と医師は事務的な口調で言った。
私は、今後の事を考えるために、
「(叔父は、)要介護状態という事ですね?」
と質問した。
医師は、
「いくら体が動いても、要介護ですね。
ご家族、ご親族で相談し、どうするか
考えなければ・・・。
一人でおいておける状態ではない。」
と言った。 そして、一般的な話しとして、認知症によって起こりうるトラブルについての話しを続けた。
医師の話では、
「認知症の場合、トラブルが発生しても、本人から状況を聞きだすことが厳しい。
相手方にも言い分があり、水掛け論になることが多い。
騙されたと本人が言っても、相手方は騙していた訳でなくて、色々と面倒を見てくれていた可能性があるかもしれない。
相手方が善意でやった事を 逆恨みされていたら、むしろ相手方の方が、迷惑して怒っている場合もあるかもしれない。
本人が言っている事自体を、本人が理解できていない可能性がある。
金銭トラブルの例として、買い物がうまくできなければ、万引きとなり犯罪を起こすことになる。
つまり、本人が悪い事をしていると思わなくても、犯罪を起こすこととなり、刑事訴訟の問題が起こる可能性も十分考えられる。
ただし、病院にて認知症と診断された後に発生した場合は、免責となる。」
との事。
つまり、介護がなければ、犯罪につながるトラブルが起こる可能性が高く、また、すでにトラブルが発生していることも考慮しなければならないということである。
介護に関しては、地域包括支援センターに頼らなければならないだろう。
(つづく)
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