72 、上京三日目.14
守叔父さんは、自分の写真写りの良さに気を良くしたためか、さらに良い笑顔へと表情が変わっていた。
それにしても、守叔父さんは実によく笑うな・・・。 もしかして、笑顔でいる時間が長いことによって老化がゆっくりになるのかもしれない。 その結果として、見た目が若いままなのかもしれない。
飲み物はセルフサービスとの事だったので、ドリンクバーへ飲み物をとりに行った。
ドリンクサーバーには、六個の押しボタンがあり、緑茶、ほうじ茶、水のそれぞれ冷温であった。
守叔父さんが何を好むか分からないので、とりあえず、温かいほうじ茶、緑茶を1杯ずつ持っていくことにした。
席に戻り、守叔父さんに、
「ほうじ茶と緑茶、
どちらが良い?」
と聞くと、
「ワカンナイ、
ドッチガ アマイノ?」
(分かんない、
どっちが甘いの?」
と聞いてきた。 ほうじ茶と緑茶の違いが分からないとはどういう事だろう。 そして、コーヒーや紅茶なら無糖、加糖の違いを気にするかもしれないけれども、まさか、ほうじ茶と緑茶の甘さを聞いてくることに驚き、答えに窮した。
仕方なく、甘みというより渋みの少ない方として、
「どちらかといえば、
ほうじ茶かな?
砂糖は入ってないよ!」
と伝えた。 そして、ほうじ茶を守叔父さんへすすめた。
守叔父さんは、受け取るとゆっくりとほうじ茶を飲んで、
「アツイ!」
(熱い!)
と言った。 猫舌のようだ。
フゥフゥしたあと、少し飲み、
「オイシイ!」
(美味しい!)
と言った。
しばらくして、注文した料理が運ばれてきた。
守叔父さんは、目の前のトンカツ定食をどうやって食べれば良いか、途方に暮れるような表情をした。 守叔父さん本人が選んだものなのに・・・。
まさか、トンカツの食べ方が分からないって事は無いだろうと思いつつ、私は自分のペースで食べはじめた。
守叔父さんは、私の真似をするようにトンカツソースを掛け、食べ始めた。
料理には、小鉢として黄色い漬物のたくあんが細かく切られたものが添えられていた。
守叔父さんは、その小鉢を指さしながら、
「コレナニ?」
(これ何?)
と聞いてきたので、「たくあん」だよと答えた。
答えを聞いた守叔父さんは、そのたくあんを躊躇することなく味噌汁の中に放り込んだ
!!!
好きなように食べれば良いと思うが、まさかの味噌汁にたくあんを入れて食べるなんて!
その行為に、すこし戸惑いながら残りの食事を食べることになった。
(つづく)
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