2023年11月1日水曜日

「泣けない人」その83

 


83 、上京三日目.25


多摩川沿いの河川堤防で飛行機を見た後、クルマに向かって歩いていると。

守おじさんがふと足を止め、空港のターミナル方向を指差しながら、
 

「アシタ、チョット、ヒマニナッタトキハ、
アノウエニ イコウヨ!」
(明日、ちょっと、暇になったときは、
あの上に行こうよ!)



と言った。

 

「明日も付き合ってくれるの?」



と答えると、

 

「ソウ!」
(そう!)



と守おじさんは、笑顔で答えてくれた。明日も、私の相手をしてくれる可能性があるってことだ!

昨日の別れ際に、次に会えるのは、日曜日って言っていたのに、昨日、今日(水曜日)、そして、明日も会ってくれるようだ。

 

「ありがとう!
よろしくお願いします!」



と伝えると、

守おじさんの表情は、より嬉しそうな笑顔に変わった。そして、空港のターミナル方向を指差し続けながら、
 

「アソコハ イイヨ!
アレ、ズゥーットイッテ、
チュウシャジョウアルジャン、
アソコカライッテ、
エレベーターノトコロカラ
ピューットウエニ アガッチャウト
ナンデモ タベラレル
イイヨ」
(あそこは、良いよ!
あれ、ズゥーっと行って、
駐車場あるじゃん、
あそこから行って、
エレベーターの所から
ピューっと上に上がっちゃうと、
何でも食べられる!
良いよ!)



と、守おじさんは言った。 

確かに、羽田空港のターミナルには色んなお食事処があるだろう! そして、展望台から飛行機もたくさん見ることができるだろう! 

飛行機に乗ることを目的にせずに羽田空港を訪れることは今まで一度も無かった。明日は、搭乗時間などを気にせずに羽田空港をじっくりと観光できるだろう! 楽しみである。

 



クルマに乗って、宿に向かって出発した。

すぐ近くの交差点(浮島通りと産業道路の交差点)には、ラウンドワンのボーリング場があった。 大きなボーリングのピンのモニュメントがあった。

その横を通り過ぎるとき、守おじさんは、そのお店をリリィさんと何度か訪れたことがあり、バスケットボールを何度かやったことがあることを教えてくれた。 そして、

 

「コンド、イコウヨ!」
(今度、行こうよ!)



と誘ってくれた。 今度とは、いつになるのか分からないけど、とりあえず、

 

「行こう! 行こう!」



と答えると、笑顔で喜んでくれた。

ラウンドワンスタジアムには、ボーリング、バスケットボールの他にも色んな遊戯設備があるので、行けば楽しいだろう!

何だか、守おじさんと遊ぶ予定が増えていくようである。 守おじさんの仕事に迷惑が掛からないかどうかが、少し心配である。

 



信号を曲がり、産業道路を北上中。 おもむろに守おじさんが、

 

「ハネダッテ、ドコ?」
(羽田って、何処?)



と言い出した。 先ほど、「明日、羽田空港へ行こう!」と約束してからまだ、何分も経っていないのに、何を言い出すのだろう・・・?

守おじさんの視線は、目の前を走っているトラックを見ていた。 

そのトラックに何らかのヒントがあるかもしれないと思い、必死にトラックの後部に書かれた文字を探した。 

しかし、そこには「ハネダ」と発音する文字は見つけられなかった。 一体何なのだろう・・・?

(つづく)
 

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