2024年1月17日水曜日

「泣けない人」その88

 


88 、上京三日目.30

カレーの煮込み具合を確認している時に、豊治叔父さんからメッセージが戻ってきた。

 

「やはり、認知症状や心身症(外圧、
ストレス)など心療内科に連れて行
って調べて貰う事が重要だと思いま
す。MRI検査はそこから回して貰う
ことを勧めます。仕事を休ませて診
て貰うことを考えて下さい。」

2021/12/01 17:54



私の伝えたかった真意は、豊治叔父さんに伝わったようだった。

予期していた通り、病院へ連れていくことの要望であった。

伝えたい事が伝わった事に安堵しつつも、今度はそのリクエストをどの様に達成するかを悩むことになった。

 





守叔父さん本人に対して、突然、「病院へ行きましょう!」と言ったところで、素直に「はい!病院へ行こう!」とはならないだろう。

きっかけ、理由が必要だろう。

もちろん、認知力の低下に関しての自覚症状がなければ、行く事を拒否するだろう。

もしも、病院嫌いならば、なおさら、連れていく事は難しいだろう。

プラセンタによるアンチエイジング治療はどの様なものなのだろうか? 

注射ならば病院での治療であろうから、病院嫌いではないかもしれない。

とはいえ、病院へ連れていくためには、どの様にすれば良いだろうかと悩むことになった。

連れていくタイミングも考えなければならないだろう。
守叔父さんが定期的に健康診断を受けているかどうかもまだ分からないし・・・。 

守叔父さんの家の内部の状況を把握し、健康診断関係の書類などがあれば、その健康診断の結果次第では説得できるかもしれないと考えた。

 





そして、私は以前、豊治叔父さんから聞いた話を思い出していた。

豊治叔父さんが、守叔父さんから聞いた話で、その内容は、


「守叔父さんは、数年前、病院へ行くと【認知症にされる】から病院へは行かなかった。」


というものであった。

【認知症にされる】という言葉をどの様に理解すれば良いのか、当時は分からなかった。

お医者さんが、故意に認知症を発症させることがあるだろうか? もしくは、正常な人に対して、「認知症」と間違った診断をくだすのだろうか?

当時、病院へ行くのを勧めたのは会社を共同経営していた安西さんであったようだ。

そして、昨日、今日、守叔父さんは、私に対して、何度も「安西さんにお金を騙し取られた」と言っていた。 

安西さんと医者が組んで、守叔父さんを「認知症」にしたのだろうか・・・?

本当に、そんな事があるのだろうか?

「守叔父さんは、数年前、病院へ行くと【認知症にされる】から病院へは行かなかった。」

という言葉が真実ならば、なおさら、認知症の外来病院へ連れていく事には多難があるだろう。

 





安西さんに直接会って、守叔父さんの事を聞くことにより、その真偽に近づける可能性はあるが、本当の事ならば、それらは犯罪であり、犯罪者に近づくことになる。


当然のように、豊治叔父さんは、安易に安西さんに会うことは承知しないだろう。

お金を騙し取られたというはっきりした証拠が有れば、安西さんへのアプローチは、それなりに考えなければならないだろう。

逆に証拠がないとすれば、安西さんに少しでも早く会って、守叔父さんの状況を聞いた方が良いだろうと考える。

しかし、「ないことを証明する」ことは難しい。

「あることを証明する」には、一つでも見つければ「あることを証明できる」が、「ない」ことは、探し続け、探し尽くした結果として「ない」ならば、その証明ができるが、探し方がおろそかになれば、証明したことにならない。

お金を騙し取られたかどうかを調べるには、守叔父さんの身の回りの金銭の流れを過去にさかのぼって調べなければならない。それらを調べるにあたって、共同経営者の安西さんの協力が必要な事も言うまでもない。

騙した側の安西さんが本当の話をするだろうか? つまり、そこにジレンマがあるため、「ないことの証明」は容易ではないという事になる。

などと、色々と頭に浮かんできた。

難しく考えれば考えるほど、難しくなるのかもしれない。

煮込み中のカレーの様子をみると、良い感じであったので、一旦、考えるのをやめて、夕食にすることにした。

(つづく)
 

0 件のコメント:

コメントを投稿