2024年3月13日水曜日

「泣けない人」その96

 


96 、上京四日目.7

缶コーヒーを飲んで一服した後、駐車場へ向かった。

門前通りは、日曜祭日のような賑わいではないものの、その狭い路地には、訪れた観光客が散在していた。

それらの人々をかいくぐって進むため、おのずとゆっくりなペースでの歩みになった。

私は、帰路「丸焼きたこせんべい」のあさひ本店に立ち寄りたいと考えていた。

江の島の名物で、たびたびテレビで紹介されていたため、そのせんべいが焼けるところを見たいと思っていたのだが・・・。 

守叔父さんには興味のないものだったようで、「見ていこうよ!」と声を掛けたものの、スルーされてしまった。

そのため、展望灯台からの帰路は、途中の飲料自動販売機での一服と、お手洗いに立ち寄っただけで、ほぼ素通りであった。

 





入口の青銅の鳥居をくぐって車道にでると、右手に進み、クルマをとめた「江の島なぎさ駐車場」に向かった。

駐車場でクルマに乗って「船をピューっとやるやつ」に向かって移動しはじめた。

「船をピューっとやるやつ」とは何だろう・・・?

過去の思い出の中で「船」に関して思い出したのは、守叔父さんが操縦するクルーザーに乗せてもらったことである。

その当時、守叔父さんはクルーザーをその所有者から預かり、日常のメンテナンス管理を請け負っていた。

私が叔父さんのところへ遊びに行った際、そのクルーザーを横浜から東京のマリーナへ移動させる必要があり、私も同乗させてもらったのだった。

その時は、運悪く天気がイマイチで風があった。 うねり・波が立っている中での移動であったため、のんびりとしたものではなかった。 下手に喋ると船の激しい揺れで舌を噛みそうになるくらいに揺れた乗船であった。

もしかすると、今でも仕事としてクルーザーの管理を請け負っているのだろうか・・・?

今日の天気なら、視界良好、波もほとんど立ってないので、快適なクルージングとなるだろう!!

期待はしていないが、少しだけウキウキしていた!

 





クルマは、七里ヶ浜の海沿い国道134号線を鎌倉方面に向かっている。

横浜のマリーナが目的地ならば、その経由地で良いだろう!

「船をピューっとやるやつ」とは、クルーザーに乗って「ピュー」と海に出ることかもしれない。 ほんの少し可能性が高くなった。

 





しばらく進むと、守叔父さんは、途中、車載のカーナビを操り、道を確認していた。

その画面はモノクロ(単色)モニターであり、旧式のため今風のナビ画面とは見た目が全く異なるものであった。

私はそのナビ画面を横から見ていたものの、その画面はどの位置・場所であるかよくわからなかった。

私の予想は合っているのだろうか?

 





道路標識を確認すると、鎌倉を過ぎて逗子方面に進んでいた。

目的地が横浜港のマリーナなら逗子方面へ進むより、金沢街道(県道204号線:横浜横須賀道路の朝比奈IC方面)の方が良いのにな・・・? 

目的地が違うのかな・・・? 逗子を通過すると横須賀逗子線(県道24号線)を進んだ。

進み、国道16号線の船越町交差点に出た。 交差点を左折し、国道16号線を北上しはじめた。

以前、私は横須賀市に住んでいた時期があるので、見覚えのある懐かしい風景が次々に目に飛び込んできた。

守叔父さんは、私の為に、敢えて遠回りルートを選んでくれたのだろうか・・・?

目的地が分からぬままのドライブが続いた。

(つづく)
 

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