97 、上京四日目.8
京急田浦駅前を通過し、横須賀街道(国道16号線)を北上中。
車内ではカーラジオが流れていた。 歌が終わり、ニュースがはじまった。
ニュースでは、歌舞伎役者の中村吉右衛門さんの死去を伝えていた。
「鬼平(おにへい)・・・。」とアナウンサーが言いかけたタイミングで、守叔父さんがカーラジオの「選局ボタン」を押し、他の番組プログラムを探しはじめた。
私は、中村吉右衛門さんの死因は何だったのだろう?享年は? とチョットだけ集中して聞いていたのだが、その不自然なタイミングでの選局により、聞き逃して分からずじまいになった。
守叔父さんは、なぜ、このタイミングで「選局ボタン」を押して選局し直すのだろうか・・・?
「他人の死」ではあるが、死因や年齢には興味はないのだろうか・・・?
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よく考えたら、守叔父さんは運転中であるにもかかわらずに、高い頻度で「選局ボタン」を押している。
NACK5、bayfm、TOKYO FM、J-WAVE、NHK FMなどのFM局を繰り返して選局して、気に入ったものをその都度聴いている。
昨日も一昨日も、同じことを繰り返していた事を思い出した。
もちろん、テレビを「ザッピング」(テレビを視聴している際にリモコンを操作してチャンネルをしきりに切り替える行為)して、好きな番組を探すように、ラジオも自分の聞きたいものを探して聞けばよいのだが・・・。
私ならば、興味のある番組プログラムが見つかれば、その番組の最後まで聴いた後、次の番組が面白くなさそうな場合には、選局し直しするだろう。
もしくは、電波の受信状態が悪く、雑音がはいるときには、別の局を探すこともあろう。
守叔父さんの「選局ボタン」タイミングは、私のその二つのタイミング、回数とは異なっているようだ。
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ニュースが流れている最中に「選局ボタン」を押され、代わりに聞こえてきたのは、上田正樹「悲しい色やね」の歌であった。
「もたれて、泣いたらあかん・・・。」と1番の歌詞の途中であり、サビの「Hold me tight」の流れる少し手前であった。
守叔父さんは、
「コレ、ダレダ?」
と聞いてきた。私の好きな曲の一つなので、すぐに答えることができた。
「上田正樹!」
すると、守叔父さんは、サビ歌よりも先に、
「Hold me tight?」
と曲のサビ歌詞を確認するかのような感じでつぶやいた。
直後、ラジオからの歌声が「Hold me tight」と流れたので、私は拍手して
「そうそう、正解!」
と言った。 その後、守叔父さんは、
「コノウタ、イイウタダヨネ!」
(この歌、いい歌だよね!)
と言い、言った直後にラジオの音量を上げて、歌声に耳を傾けることになった。
「悲しい色やね」が終わっても、守叔父さんは「選局ボタン」を押さなかった。 続いて流れてきたのは、小林明子「恋におちて -Fall in love-」であった。
「コレモ、イイウタダネ!」
(これも、いい歌だね!)
と言って、歌が流れている間は、「選局ボタン」を押すことはなかった。
(つづく)
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