2024年10月30日水曜日

「泣けない人」その123

 


123 、上京六日目.4

守叔父さんを病院へ連れていくアイデアを思いついたので、豊治叔父さんへメッセージを送ることにした。

 

 

「MRIなどの用語は、一切話してませ
ん。 一般的なことであっても、一
度決めたことを覆せません。 私の
行きたいところへつれていくと言い
ながら、守叔父さんが行きたい所へ
行く状況です。 コントロールが難
しいので、 本人の意思を病院に向
かせる事は、 骨がおれそうです。
本人が興味のあるシミの手入れを取
っ掛かりにすることが良策だとおも
っています。 最善ではないですけ
どね。」
2021/12/04 09:32



続けて、

 

「本人の口から、”嫌だ”の言葉が、一
度でも出たら、ゲームオーバーの様
子です。」
2021/12/04 09:39



とメッセージを送信した。  すると、すぐに豊治叔父さんからの返事が届いた。

 

「時間を要してもそれなりの歳なん
だから気にしない方が良い』を繰り
返し話しかけたらいいかもしれませ
ん。 手のシミとはどんなものです
か?」
2021/12/04 09:40



私は、豊治叔父さんからの返事を読み、少しだけ苛立ちを感じた。

なぜならば、どうすれば、守叔父さんの意思を「病院へ行く。」に変えるかが「鍵(キー)」となり、私はその事に集中して考えているのにもかかわらず、「手のシミ」そのものに豊治叔父さんが興味を持ったからだ。

私は、「手のシミ」には興味なく、対処する事を考えていないし、治療することなど全く考えてもいない。 ただ単に、「病院へ行く。」と意思を変えるために、「手のシミの悩み」を利用しようと考えているだけなのである。 

遠まわしではあるが、私の考えを伝えるために、メッセージを送信した。

 

「歳とると、誰にでもある。私にもあ
るチョッとした、ほくろの大きめの
ものを 非常に気にしています。 直
したいけど、どうすれば良いのか分
からないと。 私に直し方を相談し
てきましたので、 病院へ行く口実
には丁度良いと考えてます。」
2021/12/04 09:46



しばらくして、豊治叔父さんから返事が届いた。


「『なぜ?』を本人から言える状況を
作ることしか無いでしょうね。 本
人はMRI検査の受けて認知症だと診
断されたらお終いだと意識の奥にあ
るのでしょう。2年前から現在では
時間を経た分、悪化している可能性
が高いのです。 どんな口実でも良
いのです。病院に連れて行って下さ
い。」
 2021/12/04 09:49



豊治叔父さんからのメッセージを読み、私の頭は混乱した。

「『なぜ?』を本人から言える状況を作ることしか無いでしょうね。」とは、どういう事だろう?

「なぜ、私は病院へ行かなければならないのか?」と守叔父さん本人に考えさせる状況を作ることなのだろうか?

イマイチ、言葉の意味を理解できなかったので、読み飛ばすことにした。

続く文章、「本人はMRI検査の受けて認知症だと診断されたらお終いだと意識の奥にあるのでしょう。2年前から現在では時間を経た分、悪化している可能性が高いのです。」と書かれていることに疑問を持った。

守叔父さん本人は、2年前、認知症の自覚症状があったのだろうか?

仮に、2年前、守叔父さんに認知症の自覚症状がなく、自分の脳に「自信」があったとするならば、認知症の検査を自ら進んで受けただろう。そして、脳が「正常」であることを証明すれば、安西さんとの会社でのトラブルは起きなかったのではないだろうか?

逆に、認知症の自覚症状があった場合、その原因を調べ、治療するために、検査を自主的に受けるのではないだろうか?

豊治叔父さんのいうところの、守叔父さんが「無知」だから、検査を受けないと言う選択肢があったのだろうか?

いずれにせよ、脳の検査を2年前に受けるべきであったと考えられる。 と言うか、2年前に脳の検査を受けているのではないか?とすら疑って考えた。

「守叔父がMRIを嫌がるのは安西が守叔父に『認知症だ痴呆症だ』MRI検査をすれば分かります。と反論してるせいでは無いかと思います。」という言葉があったが、安西さんは、すでにMRI検査でなくCT検査を守叔父さんに受けさせていて、脳に障害があることが分かっているのではないかとも考えることができた。

豊治叔父さんは、どれだけ弟の守叔父さんの現在の状況を正しく理解しているのだろうか?

そして、2年前の状況をどれだけ、正しく理解していただろうかと、疑問になった。

守叔父さんが認知症であると仮定すると、その守叔父さんの発した言葉は、信頼に値するものとはならない。

2年前の当時の守叔父さんの言葉を、豊治叔父さんは鵜呑みにしているだけではないかと私は考え始めていた。

そして、「2年前から現在では時間を経た分、悪化している可能性が高いのです。」と書かれているという事は、豊治叔父さんは、守叔父さんが脳障害を伴う認知症であると考えているという事なのだろう。

先ほどは、「ストレス障害では無いかと思います。」と豊治叔父さんは書いていたが、ストレス障害ならば精神的なものであり、CT/MRI検査では「正常」という結果がでるのだろうと考える。

豊治叔父さんの考えていること自体も矛盾しているように思い、困惑した。

そして、安西さんは、2年前に何と言っていたのだろうかと気になった。

豊治叔父さんは、安西さんと直接会話した事があったのだろうか・・・?

もし、当時、守叔父さんの話だけを聞いて、安西さんと会話していなければ、正しい情報は
得られなかっただろう。

トラブルが起きたとき、当事者の片方からだけ話を聞いても、そのトラブルを解決はできない。

豊治叔父さんは、「俺が弁護士を雇ってトラブルを解決した。」と言っていたが、2年前のトラブルは本当に解決できているのだろうか・・・?

(つづく)
 

2024年10月23日水曜日

「泣けない人」その122

 


122 、上京六日目.3

しばらくして、豊治叔父さんからメッセージが届いた。

 

「私の推測では家に灯りを消して閉じ
こもる様子から見て、2年ものコロ
ナ禍の自粛ムードで何処の弁護士や
警察など公的機関の腰の引けた対応
や安西等の強弁で自分を信じて貰え
ない悔しさ等のストレス障害では無
いかと思います。 兎に角、心療内
科に連れて行って下さい。そこから
最新MRI設備の有る大学病院で精密
検査して貰えるように誘導して下さ
るようお願いします。」
2021/12/04 08:49



豊治叔父さんは、守叔父さんの現状はストレス障害によるものであり、認知症ではないと考えているようだ。

たしかに、ストレス障害の可能性もあるだろうし、その場合は治療が可能かもしれない。

社会福祉士の栗山さんから教えていただいた「前頭側頭型認知症」の可能性についてメッセージを書こうとも考えたが、推察の範囲であり説明に手間もかかるので、やめることにした。

いずれにしても、病院へ行き、検査を受ければ分かることだろう。

豊治叔父さんのメッセージに対して、返事をせずにいたら、続けてメッセージが届いた。

 

「守叔父がMRIを嫌がるのは安西が守
叔父に「認知症だ痴呆症だ」MRI検
査をすれば分かります。と反論して
るせいでは無いかと思います。しか
し、アミロイドβが多少有っても必
ずしも「全てが認知症」とは言えま
せん。個人差が有るからです。歳を
重ねれば、誰でもアミロイドβが脳
内に発生しているからです。むし
ろ、安西が周りに「守叔父は認知症
だ」と仕掛けた時にさっさと診断を
受けていれば問題無かったハズで
す。無知と恐れが有ったのでしょ
う。 自分から調べれるのを怠った
ので現在が有るのです。全てストレ
スでしょう。」
2021/12/04 09:19



豊治叔父さんはストレスが原因というけれど、極度のストレスによって言葉が理解できなくなるほどの人が、クルマを上手に運転できるのだろうか・・・?

『安西が周りに「守叔父は認知症だ」と仕掛けた時』とは、安西さんと守叔父さんの間でトラブルがあったときの事だろう。

トラブルとは、守叔父さんの会社を安西さんが乗っ取るかどうかの話だったと思うけれど、会社を乗っ取るために、社長(守叔父さん)を認知症に認定して何の得な話があるのだろう?

従業員は数人の運送会社である。 会社の規模(売上など)を考えると、乗っ取る価値のある会社ではないだろう。

わざわざ、守叔父さんを認知症に仕立て上げて、会社の経営権を奪ったところで、儲けがでるわけでもない。

トラブルがあった時には、すでに認知症を患っていて、認知症のために、会社でトラブルが起こっていたと考える方が自然だと思われる。

安西さんは、単に守叔父さんの認知症を疑い、その検査を受けて欲しかっただけなのではないだろうか?

とにかく、病院へ行き検査することが最大の課題である。

当時、病院へ行けず、MRIを嫌がったのならば今回も無理なのではなかろうか・・・。

などと、考えていると、ふと、思い出したことがあった。

看護師さんのアドバイスとして、守叔父さんが体の事で、困っている事を見つけてくださいとの事。

そして、守叔父さんが困っているだろうことを思い出した。

それは、腕の辺りを気にしている事だった。

昨日、シャツの右腕をまくり上げて、腕にあるシミを気に掛けていたのだった。

年齢とともに、誰にでもできるシミのようであったが、そのシミを消したいと訴えていた。

守叔父さんは、自分を若くみせることに余念がない。

「病院へ行けば、消すことができるよ。」と守叔父さんへ伝えれば、病院へ行くと言ってくれるかもしれない。

(つづく)
 

2024年10月16日水曜日

「泣けない人」その121


 

121 、上京六日目.2


守叔父さんは、10時30分に迎えにきてくれるようだ。

しかし、守叔父さんの言う「カイロ」が、本当に「カイロプラクティック」などの整体なのか確認が必要と考えた。 

そのため、守叔父さんに電話をかけた。

 

「カイロは、どこへ行く?」



と聞いてみたが、

 

「ワカラナイ。」
(分からない。)


との返事が返ってきた。

 

「その治療院の名前は?」



と聞いても、

 

「ワカラナイ。」
(分からない。)



との返事が返ってきた。

 

「場所は、どこなの?」


 

「バショ・・・? 
ワカラナイ」



との返事。口癖のように「ワカラナイ」と言われてしまった。
電話によるコミュニケーションでは、治療院の名前、場所ともに聞き出すことはできないようだ。せめて、近場なのか、遠いところにあるのかくらいは確認できれば良いと思い、


 

「家から近いところにあるの?」



と聞いてみた。すると、

 

「チカイトコロ、アルイテイク。」
(近い所、歩いていく。)



との返事であった。 守叔父さんの家から歩いていける範囲内に治療院があることは分かった。守叔父さんは続けて、

 

「オワッタラ、
ジュウジハンニ、イク、
ダイジョウブ。
ジャアネ。」
(終わったら、
10時半に行く、
大丈夫。
じゃあね。」



と言って、たいした情報を得られずに電話を切られてしまった。

 





現在の時刻は午前7時半。

守叔父さんが迎えに来るまでには3時間ある。

時間に余裕があるので、豊治叔父さんへ、連絡を入れることにした。

守叔父さんから銀行の通帳を見せて貰う方法を、豊治叔父さんも考えているかもしれない。

マイク叔父さんからナイスなアイデアをすでに貰っているので、考えることは不要であると伝えたかったからだ。

 
 

「豊治叔父さま おはようございま
す。甘太郎です。今朝は、朝駆け失
敗。 しかし、10:30くらいに
迎えに来てくれるとの事で、
(守叔父さんと)行動を共にします。
マイク叔父さまのアイデアで、
安西さんに騙された事を確認するとの
口実をもとに、銀行の通帳を
見られれば良いなと考えています。 
そして、健康診断と称して、
CT検査などを受けて貰うように
説得したいと思います。
うまく行くと祈念し、
行動したいと思います。ちなみに、
昨日、一度だけ、守叔父さんが
”富士山”と口にし ました。(^_^)/
日頃の日常会話不足が原因であった
のかもしれませんね。チョッとずつ、
会話すれば、良くなる可能性があるかも
しれません。期待しましょう。」
2021/12/04 07:54



豊治叔父さんからすぐに、返事が返ってきた。

 

「ありがとう。家賃や光熱費を支払っ
ている口座を確認させて貰うのが手
っ取り早いと思います。入金も確認
出来るハズです。」
2021/12/04 07:59



豊治叔父さんの返事は、守叔父さんに通帳をみせて貰う方法のアイデアではなく、その先の話であった。

手順としては、通帳の内容をみることによって、その口座が何に使われているかどうかがわかることになるだろう。

必要な情報がその通帳になければ、別の口座の通帳をみせてもらえば良いことである。

なぜなら、守叔父さんに対して、「家賃や光熱費を支払っている口座の通帳を教えて」と聞いても「ワカラナイ」が戻ってくることは容易に推測できるからだ。

その前に、
 

「ツウチョウッテ、ナニ?(通帳って、何?)」

 

「ワカラナイ」


と言われる可能性もあるだろう。 その場合、通帳のありかを探さなければならないだろう・・・。

(つづく)
 

2024年10月2日水曜日

「泣けない人」その120


 

120 、上京六日目.1


スマホの音で目が覚めた。

確認するとLINEのメッセージが届いていた。

めぐみ叔母さんからのものだった。

 

「甘さん、ありがとう。
今、帰りの飛行機の中で離陸を待ってます。」

2021/12/4(土) 4:28



「飛行機での移動中は連絡がとれませんよ。」との意味だろうから、単純な返事で良いだろうと考えた。

それにしても、早朝4時過ぎ、少し早いな・・・。と思ったけれど、昨晩、私も同じ事をめぐみ叔母さんへやってるしな・・・。

お互い様だな・・・と思いながら送信した。


 

「はーい(OKサインのスタンプを添えて)」
2021/12/4(土) 4:29




そのまま、二度寝をしようとしているところに、再度メッセージが届いた。

そこには、ひとつのアイデアが書かれていた。

めぐみ叔母さんの夫であるマイク叔父さんによるものであった。

メッセージは、

 

「マイク曰く、
守さんに
『安西さんがお金を盗んだかどうかを
調べてあげるから通帳を見せて』
と言えば良い。。。と。」

2021/12/4(土) 4:31


であった。

私は半分寝ぼけた頭の状態であったが、そのアイデアが良いことはすぐに理解できた。

感謝の返事を送ろうとしていると、続けてメッセージが届いた。

 

「いかがですか?」
2021/12/4(土) 4:31



こちらが考える間もなく、催促のメッセージが届き、早いなと・・・、と思いつつ。
返信した。

 

「そうですね!
ナイスアイデア、
ありがとうございます。」

2021/12/4(土) 4:32



続けて、クマさんがお辞儀をする動画スタンプを送信した。

 

(クマさんがお辞儀するスタンプ)

2021/12/4(土) 4:33



マイク叔父さんが、いつアイデアを考えついたのかは分からないが、めぐみ叔母さんは、少しでも早く私に伝えたかったのだろう!

かつ、私の睡眠を邪魔しないギリギリのタイミングを見計らって、飛行機の離陸前の短いタイミングに、急いで送信してくれたのだろう!

その配慮に感謝しつつ、通帳を見るアイデアを手に入れた事により、ひと安心できたので、もう少し寝る事にした。

 





二度寝の後、7時過ぎに目が覚めた。

6時位に自然に起きることができれば、朝駆けに行こうと考えていたが、すでに1時間過ぎていた。

朝駆けは断念し、守叔父さんへメッセージを送る事にした。

 

「守叔父さま
おはようございます。 
甘太郎です。
何時に、お出かけですか?
もし、良ければ、
送って欲しいところがあります☀
わがまま言って、ごめんなさい。
いかがでしょうか?」

2021/12/4(土) 7:16 



続けて、

 

「行き先は、浮島町公園です。 
おじさんが、無理なら、
歩いて行こうと思います(^_^)/」

2021/12/4(土) 7:19



しばらくして、メッセージが返ってきた。


「カイロに、行きます。」
2021/12/4(土) 7:31


続けて、


「大丈夫🙆♂
10時30分には、行きます。」

2021/12/4(土) 7:32


というメッセージであった。


「カイロ」とは、首や肩の調子が悪く、毎週通っていると言っていた「カイロプラクティック」のことであろう。

治療の後に、宿に迎えに来てくれるのだろう。

(つづく)