2025年2月12日水曜日

「泣けない人(病院編)」 その3

 


3.上京八日目.3

守叔父さんが、トイレから戻り、私の横に座った。

 

「検査どうだった?」



と私が声を掛けた。守叔父さんは、

 

「ダイジョウブ」
(大丈夫)



と笑顔で返事した。 検査の内容を聞こうと、

 

「何したの?」



と聞いても、再度、

 

「ダイジョウブ」
(大丈夫)



との返答が繰り返されただけだったので、どんな検査があったのか聞き出せなかった。

 





しばらく待合室で待っていると、看護師さんから、「先に、ご家族の方からお入りください。」と声を掛けられ、先に私だけが診察室へ入ることになった。

まず最初に、医師から病院へ来ることになったきっかけを問われた。

私は、私と守叔父さんの関係や守叔父さんの兄、姉である豊治叔父さん、めぐみ叔母さんとの一連のやりとり経緯を伝えた。 また、守叔父さんが会社や金銭トラブルを抱えているかもしれない事などを伝えた。

問診票の内容と重複する話しもあったが、10分程の会話のやりとりが続いた。
一通りの話しが終わると、医師が机上のパソコンを操作しはじめた。 

PCモニターにはCT検査のものと思われる画像が映し出された。

画像の左上には、2021/12/06 09:15:50 トヨダ マモル M 誕生年/月/日 と記載されており、守叔父さんのものであることが分かった。

医師は、複数枚の画像をパラパラ漫画のように連続的に短時間で確認したのち、頭でうなずきながら、

 

「今、頭のCT(画像)出たんですね。」



と言った。わずか数秒画像を見ただけで病状の診断ができたようだった。

時間を掛けずとも、すぐに分かるほどの明らかな異常が見つかったのだろうか・・・?

そして、CT画像をもう一度繰り返してパラパラ見ながら早口で、

 

「これは、かなり〇〇がありますね。」



と言った。

聞きたくない言葉を私の心がフィルターしたのかもしれないが・・・、私は「〇〇」の部分の言葉が聞き取れなかった。 

冷静に考えると、医者の使う言葉は、「異常あり、異常なし」と表現することが一般的であろうし、日本語で「かなり正常がある」とも言わないので、「〇〇」に入る言葉は「異常」であろうと察した。

恐る恐る、私は、

 

「異常?」



と聞き返した。

医師は少しゆっくりとした口調で、

 

「異常がありますね。」



と明瞭に断言して答えてくれた。 私は予期していたとはいえ、

 

「そうなんですね。」



との相づちを返すことしかできなかった。

そして、頭の中で、「異常がありますね。」との言葉が繰り返されていた。

 

「〇〇が全然、無くなっちゃってて、
潰(つぶ)れちゃってるんですね。
委縮(いしゅく)して。」



と医師の病状の説明が続いた。

何が無くなっているのだろう・・・?

先生の早口が相まって、主語の「〇〇」が聞き取れなかった。

「委縮して。」との言葉が続いたことで、主語が「脳」に関する言葉であろうことは理解できた。

パラパラ漫画を見るような短時間で、それらのCT画像を見ただけでは、医学の知識の乏しい私にはさっぱり異常の所在が分からなかった。

 

「何処がおかしい(異常)のですか?」



と伝えると、

医師は、パラパラ見ていた画像の中から一枚の画像を選び、そのCT画像から分かることを説明しはじめてくれた。

(つづく)
 

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