2023年12月13日水曜日

「泣けない人」その85

 


85 、上京三日目.27
 

守叔父さんを見送った後、私は宿のロビーに入り、この後に何をしようかな?と思案しはじめた。

豊治叔父さんや、めぐみ叔母さんへの現状報告の連絡を入れる事以外には、特にやることがない。 

明朝になって、守叔父さんからの連絡が入るまでは、ある意味では自由な時間である。

外はまだ、十分に明るいし、このタイミングで直接、部屋に戻るとその後の外出が億劫になるかもしれないし・・・。

そのため、夕食までは、まだまだ時間があるが、とりあえず、今夜の夕飯を考えることにした。

「外食」にするか、「コンビニ食」か、それとも、「自炊」するか?

いつまで、東京に滞在することになるのか未定の状態で、外食を続けるにはお金の心配もあるし、コンビニ食は健康を考えるとなるべく避けたい。

昨日と比べ、疲労は溜まらなかった感じがし、自炊する余裕がありそうに感じたので、自炊することを選択した。

昨日は、叔父さんの一挙手一投足や表情を細かく観察する事に資力をフル活用したため、疲労困憊であったが、今日は、昨日に比べると無理せずに、時の流れに身を任せる自分がいたようだった。

 





夕食どきまでは時間がたっぷりあるので、時間をかけた料理ができる!

フロントで、調理用具や食器類を借りる事にした。

宿には、簡単な料理なら出来るキッチンがある。

シンクはもちろん、一口の電磁調理コンロ、電子レンジ、小型とは言え製氷もできる冷凍冷蔵庫も備えられている。

宿から200m位のところにスーパーがあり、生鮮食料品も買える!

 





部屋に戻り休憩することなく、そのまま、買い物に出かけることにした。

お店に入って、野菜コーナーへ行くと、鹿児島の地元スーパーでは見かけないものが目に留まった。

それは、複数の異なる種類の野菜が袋詰めされている商品であった。

透明なビニール袋の中には、「じゃがいも」「玉ねぎ」「ニンジン」が入っており、カレーライスやシチューを作るための「野菜セット」であった。

迷わずに、その「野菜セット」を一袋、買い物かごに入れた。

その袋を見つけたことにより、ほぼ自動的に献立が決まることとなったのである。

メニューは、「カレーライス!」に決定!

他に必要なものは、「カレーのルー」「お肉」

カレーの料理は、適当にカットして、後はのんびり煮込むだけ!

気分転換や時間潰しになるだろう!

料理中と食事中に、それぞれ飲むために缶ビールを2本買い、宿に戻った。

その後、実際に食事をしながら気付くのだが、カレーライスの添え物の「らっきょう」「福神漬け」を購入することを忘れていた。

 





小さなキッチンであり、かつ、限られた道具のため、日頃とは勝手が違い、手順や方法を工夫しつつ料理を進めた。

一種のパズルゲームを解くような感じでの作業での料理であった。 

料理に集中することによって、自然と今日一日に起きた事象について、頭の中で勝手に整理されていった。

 





守叔父さんの状態は、昨日と今日と大きく変わらず、他人(私)を欺いているような不自然さもなく、終始一貫マイペースであったな・・・。

そのため、守叔父さんが、なんらかの脅迫を受けているとは考えられないし、隠し事がある様にも思えなかったな・・・。

 





野菜と肉が程よく炒められたので、昨夕購入した赤ワインの残りを使って煮込む事にした。

そうすれば風味の高いものとなるだろう!

(つづく)

 

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