100 、上京四日目.11
八景島シーパラダイスの滞在時間は、場内の移動時間20分、シーパラダイスタワー搭乗10分、計30分程のわずかな時間であったが、守叔父さんは、十分に楽しんだといったような満足そうな笑顔をしていた。
私は、対照的に「船をピューっとやるやつ」の謎が頭から離れずに困惑していた。
クルマを駐車場から出し、移動しはじめて数分後、交差点にて信号待ちをしていると、守叔父さんは、声を出しながら何かを数え始めた。
「イッコ、ニコ、サンコ、ヨンコ、ゴコ。」
(一個、二個、三個、四個、五個」
数え終えたようだ。そして、
「ゴコダッタネ!」
(五個だったね!)
と言って微笑んだ。何の個数だろう?
周囲で数えられるモノを探したが、「個」の助数詞を使って数えられるモノで「五個」になるものは見つけられなかった。
何「個」とは数えられないものかもしれないな、、、。と考え直してみた。
交差点を横切ったクルマは10「台」以上もっとたくさん走っていたし・・・。
街路樹も数えられないほど、何「本」も林立している。
他に何か視界に入っていたモノが有っただろうか?
守叔父さんが数えはじめた時に、道路に並走している高架上をシーサイドラインの列車が通り過ぎたのが見えていたような・・・気がするが、今は見えていない。
シーサイドライン車両に関する何らかの数なのだろうか?
ぼんやりして見過ごしていたので分からないが、もしかして「車両数」なのだろうか?
もう一度、見ることができれば確認できるだろう。
信号が変わり、クルマを進めると、運良くシーサイドラインの車両をもう一度、見ることができた。
同一車両では無いかもしれないが、私は声を出しながら数えることにした。
「一、二、三、四、五」
と数えた。確かに五両だった。
「五両だね!」
と守叔父さんに伝えると、
「デショ!」
((そう)でしょ!)
と返事がかえってきた。守叔父さんの表情をみると、数えまちがってなかった事を喜んでいるようだったので、先ほどの「五個」は、車両数の「五両」を数えていたことが理解できた。
車両数を「個」で数えることには少し戸惑ったが、「船をピューっとやるやつ」に比べるとさほど驚きは無く、「助数詞」の使い方もままならないことに気がつくことになった。
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その後、クルマは進み、横浜を過ぎ、川崎に近づいていた。 唐突に、守叔父さんが、
「フネ、ミタコトアル?」
(船、見たことが有る?)
と言った。
江の島の展望台から「漁船」を見てから数時間しか経ってないのにな・・・?と思っていると、
「アッチニ、オッキナフネガアル。」
(あっちに、大っきな船が有る。)
と海とは反対側の西を指差しながら言った。
「船」ならば、「海」の方向を指差すだろうが、、、。
守叔父さんの表現している「フネ」は「船」では無いのかもしれないと推測した。
もしも、シーパラダイスの展望台を「フネ」と表現したのならば、展望台が有るのだろうか?
「イッテミル?」
(行ってみる?)
と守叔父さんが聞いてきたので、「フネ」が何であるかを理解する為には良いチャンスだと思い、
「行く! 行く!
行ってみたいな!」
と答えた。すると、守叔父さんはウィンカーを左に入れた。そして、次の交差点を左折した。
ちょうど、川崎駅へ向かうルートであった。
守叔父さんの「フネ」は、何を指しているのだろうか?
(つづく)
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