2024年4月10日水曜日

「泣けない人」その100

 


100 、上京四日目.11


八景島シーパラダイスの滞在時間は、場内の移動時間20分、シーパラダイスタワー搭乗10分、計30分程のわずかな時間であったが、守叔父さんは、十分に楽しんだといったような満足そうな笑顔をしていた。

私は、対照的に「船をピューっとやるやつ」の謎が頭から離れずに困惑していた。

クルマを駐車場から出し、移動しはじめて数分後、交差点にて信号待ちをしていると、守叔父さんは、声を出しながら何かを数え始めた。

 

「イッコ、ニコ、サンコ、ヨンコ、ゴコ。」
(一個、二個、三個、四個、五個」



数え終えたようだ。そして、

 

「ゴコダッタネ!」
(五個だったね!)



と言って微笑んだ。何の個数だろう?

周囲で数えられるモノを探したが、「個」の助数詞を使って数えられるモノで「五個」になるものは見つけられなかった。

「個」とは数えられないものかもしれないな、、、。と考え直してみた。

交差点を横切ったクルマは10「台」以上もっとたくさん走っていたし・・・。

街路樹も数えられないほど、何「本」も林立している。

他に何か視界に入っていたモノが有っただろうか?

守叔父さんが数えはじめた時に、道路に並走している高架上をシーサイドラインの列車が通り過ぎたのが見えていたような・・・気がするが、今は見えていない。

シーサイドライン車両に関する何らかの数なのだろうか? 

ぼんやりして見過ごしていたので分からないが、もしかして「車両数」なのだろうか?

もう一度、見ることができれば確認できるだろう。

信号が変わり、クルマを進めると、運良くシーサイドラインの車両をもう一度、見ることができた。

同一車両では無いかもしれないが、私は声を出しながら数えることにした。

 

「一、二、三、四、五」



と数えた。確かに五両だった。

 

「五両だね!」



と守叔父さんに伝えると、

 

「デショ!」
((そう)でしょ!)



と返事がかえってきた。守叔父さんの表情をみると、数えまちがってなかった事を喜んでいるようだったので、先ほどの「五個」は、車両数の「五両」を数えていたことが理解できた。

車両数を「個」で数えることには少し戸惑ったが、「船をピューっとやるやつ」に比べるとさほど驚きは無く、「助数詞」の使い方もままならないことに気がつくことになった。

 





その後、クルマは進み、横浜を過ぎ、川崎に近づいていた。 唐突に、守叔父さんが、

 

「フネ、ミタコトアル?」
(船、見たことが有る?)



と言った。

江の島の展望台から「漁船」を見てから数時間しか経ってないのにな・・・?と思っていると、

 

「アッチニ、オッキナフネガアル。」
(あっちに、大っきな船が有る。)



と海とは反対側の西を指差しながら言った。

「船」ならば、「海」の方向を指差すだろうが、、、。

守叔父さんの表現している「フネ」「船」では無いのかもしれないと推測した。

もしも、シーパラダイスの展望台を「フネ」と表現したのならば、展望台が有るのだろうか?

 

「イッテミル?」
(行ってみる?)



と守叔父さんが聞いてきたので、「フネ」が何であるかを理解する為には良いチャンスだと思い、

 

「行く! 行く!
行ってみたいな!」



と答えた。すると、守叔父さんはウィンカーを左に入れた。そして、次の交差点を左折した。

ちょうど、川崎駅へ向かうルートであった。

守叔父さんの「フネ」は、何を指しているのだろうか?

(つづく)
 

0 件のコメント:

コメントを投稿