2024年4月3日水曜日

「泣けない人」その99

 


99 、上京四日目.10


行き先の分からないドライブが続いている。 

以前、住んでいた地域周辺なので、道に迷うなどの不安は特に無い。

てっきり、交差点を直進して「横浜ベイサイドマリーナ」へ行くのだろうと思った矢先に、右折するとの事、私の予想は違っていたようだ。

東京湾岸道路を南下すると、突き当たりは「八景島シーパラダイス」である。

守叔父さんの目的地は、「八景島シーパラダイス」なのかもしれないと考え直した。

 

「この先、八景島だよ!
シーパラダイスに行くの?」



と問うと、

 

「ソウ、ソウ!、ソコ、ソコ!
モウスグ、ツク!」
(そう、そう!、ソコ、ソコ!
もうすぐ、着く!)



と言いながら、八景島の方向を指差した。

行き先が「八景島シーパラダイス」であることがハッキリした。

いまさらながら、八景島に行く事が分かっていなくても、「京急金沢八景駅」の近くの交差点を海側へ曲がるように伝えて、海岸沿いを進んでいれば近道だったのにな・・・・。と少しだけ後悔した。

 





シーパラダイスの駐車場の案内看板を見つけると、守叔父さんは笑顔で、

 

「ココ!、ココ!」
(ここ!、ここ!)



と言って、迷いなく看板の指示通りに駐車場内へ進んだ。

駐車場は八景島の島外にあるため、八景島へは歩いての移動、そして、「マリンゲート」と呼ばれる橋を渡る必要がある。

駐車場から歩いて「八景島シーパラダイス」を目指した。

 





橋を渡り、シーパラダイス場内に入ると、守叔父さんは行き先がハッキリとわかっているようで、場内の案内図などには脇目もふらず、歩みを続けた。

私は、遊覧船に乗ったことはなく、その乗り場がどこなのか知らなかったので、守叔父さんの後について歩くだけだった。

 





いくつかの建物に入っては出て、入っては出てを繰り返した後、建物を出ると目の前には、大きなタワーが立ちそびえていた。

タワーの先に遊覧船乗り場があるのだろうか・・・?

守叔父さんは、ドンドンそのタワーに近づいて行った。

「シーパラダイスタワー」の搭乗券の券売機を見つけると、迷いなくチケットを購入した。

「船をピューっとやるやつ」に行くと言っていたのに、目的を変更したのだろうか?

それとも、「シーパラダイスタワー」「船をピューっとやるやつ」と表現したのだろうか?

まず最初にタワーに昇った後、遊覧船に乗るつもりなのだろうか・・・?

なんだか、キツネにつままれたような気分になった。

1時間ほど前に、「江の島シーキャンドル」の展望台に登ったばかりなので、展望台の「連チャン」である。

昨日の「横浜ランドマークタワー展望台」も含めると、「3連チャン」の展望台となる。

天気が良く、遠くまで眺望できる空気の澄み切った日が続き、ラッキーではあるが、少しお金の無駄遣いかな・・・?とも感じていた。

シーパラダイスタワーは、その展望台部分がゆっくりと回転しながら上下する乗り物で、地上90mから360度のパノラマ風景を見ることができ、「展望台」「アトラクション」をミックスしたものである。

守叔父さんは、終始、笑顔で遠くの景色を楽しんでいた。


「シーパラダイスタワー」から降りると、来た道をそのまま戻ることになった。

遊覧船には乗らないのだろうか・・・?

 

「船に乗らないの?」



と尋ねると、頭を横に振り否定しながら、胸元からスマホを取り出し「時刻」を確認した後、

 

「カエロウ!」
(帰ろう!)



と言った。

そして、そのまま歩き続けて「マリンゲート」を渡ることになった。

「船をピューっとやるやつ」は何だったのだろう?

まさか、「シーパラダイスタワー展望台」の事を「船をピューっとやるやつ」と表現していたのだろうか?

私は、守叔父さんの言動と行動がまったく理解できない状況に戸惑ってしまった。

(つづく)
 

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