2025年3月5日水曜日

「泣けない人(病院編)」 その6

 

 


6.上京八日目.6

モニターに映るCT画像をスマホで撮影させて貰った。

この画像があれば、豊治叔父さん、めぐみ叔母さんへの守叔父さんの状況報告の一助となり、うまく伝えることができるだろう。

言葉で伝えることの難しい部分を、写真が代弁してくれることを期待する。

撮影後、医師が血液検査の書類を見ながら、

 

 

「血液検査では、
血液の中のカルシウムやリンなどの
栄養のバランスが若干悪いという
数値が出ています。

栄養状態があまり良くない。」



と指摘した。

守叔父さんの食生活は、朝食「あんぱん」、昼「カップ麵」、夜「冷凍食品」が繰り返されているようなので、炭水化物中心の食事であり栄養が偏って不健康なのは当然だろう。 

健康診断において、何らかの異常があってもおかしくはないだろうとは予期していたが、血液検査に出る程、長期に渡って不健康な食事を摂っていたという事なのだろうか?

「認知症」を発症したことによって、日常生活が単調となり、ルーチン化された不健康な食生活となっていたのか、ただただ不健康な食事を続けたために「認知症」となったのか・・・?

続いて、尿検査。

尿検査は特に異常なしとの事で、腎臓機能は問題なさそうだ。 

糖尿病を発症していないので、その部分については一安心できた。

CT検査、脳波検査によって、守叔父さんの脳には異常がある事がハッキリと分かったが、ここ数日間、守叔父さんの運転によるドライブを楽しんでいたのも事実である。

脳に明らかな異常が認められるのに、なぜ、クルマの運転ができるのだろうかと疑問が生まれた。

 

「クルマの運転は、、、。」



と医師に伝えると、

 

「(運転できる事が)不思議ですけど、、、。

ただ、信号の意味とか、赤とか方向とか、
表示による字の意味、もしかすると(意味)を
間違えているかもしれないので、
非常に大きな事故を起こすかもしれない
危険が有ります。

運転免許をどうやって取り上げるかは
別の次元の話しになりますけど。

運転して良いかと聞かれたら、
僕はダメですと言います。。

そう言わざるを得ません。

誰が(運転)止めるのか、、、。」



と言った。 私が期待した答えではなかったので、再度、質問を繰り返した。

 

「なぜ、運転ができたのですかね?」

 

医師は、検査結果の書類に目を通しながら、


 

「結構、運動神経は良いみたいで、
バランス(感覚)は良いですね。

脳の障害による平衡障害はありますね。

(しかし、)見かけのバランス(感覚)は良いですね。」



と答えた。

 

私は、バランス感覚が良いという理由だけで運転ができるとは考えないが、医師が「(運転できることが)不思議ですけど・・・。」と言った以上、不可解な事なのだろうと考え、運転ができる理由をこれ以上に深掘りすることはやめることにした。 

運転できる理由が分かっても、分からなくても、どちらにしても、今後、守叔父さんにクルマの運転をさせる訳にはいかないことに違いはないし・・・。

そして、今後、将来の対処方法を模索する方向へ思考を切り替えた。

 

「原因が分かってホッとした
気持ちはありますが、
今後をどう考えれば良いのか・・・・。」



と伝えると、医師は、

 

「脳の異変であることは事実です。」



と再度、念押しをされた。

医師のその言葉から、「治療方法は無い。」との言外の意味を読み取ったので、半ば諦めの心境になりつつ、無駄だとも考えたが、勘違いもあるかもしれないし、現代医学の進歩を信じて、

 

「今後の対処といいますが、
お薬とか・・・。」



と聞いてみた。 

残念ながら、医師はハッキリと、

 

「いや、(脳の)委縮を治す薬はありません。」



と断言したのだった。

その重たい言葉に対しては、

 

「なるほど」



と相づちを打つしかなかった。 現代医学が進歩していても、脳の再生医療はまだできないという事だ。

残念、、、。

私は、少し放心状態になっていた。

(つづく)
 

0 件のコメント:

コメントを投稿