9.上京八日目.9
「認知機能の問診」が続いた。
医師は、
「今日は、何曜日?」
と聞いた。 守叔父さんは、
「キョウハ、ゲツヨウビ、ダ・ヨ・ネ。」
(今日は、月曜日、だ・よ・ね。)
と、私の顔を見て、確認するような素振りをしながら答えた。
守叔父さんは、「私と月曜日に病院へ行く。」という約束をして、この場にいる。
曜日感覚には問題ないと思っていたので、正しい答えが戻ってきて良かった。
はじめての正答となった。
医師は、うなずくと続けて、
「(今日は、)何月何日?」
と質問した。
守叔父さんは、
「エーット、
ジュウニガツノ・・・。
チョット、マッテ、
ワカンナカッタ。」
(えーっと、
12月の・・・。
ちょっと、待って、
分かんなかった。)
と言って、胸ポケットからスマホを取り出した。まさか、「認知機能の問診」でカンニングしようとするとは・・・!
たしかに、守叔父さん本人は、健康診断として来院しているため、「認知症の検査」とは認識していないのだが・・・。
医師は、守叔父さんがスマホで日付を確認するのだろうと察して、
「いいですよ。どうぞ、調べて!」
と、スマホを使う事をうながした。
「認知機能の問診」において、スマホ利用などのカンニングはどのように評価されるのだろう・・・?
スマホを使えるかどうかも判断材料の一つなのかもしれないな・・・、とも考えた。
守叔父さんは、少しバツが悪そうにヘラヘラ笑った後、スマホのカレンダーを見ながら、
「ジュウニガツノ
ムイカ。」
(12月の6日)
と答えた。
医師は、拍子木を叩いたような感じの声で、
「はい、正解です!」
と言った。 カンニングOKのサービスにより、二つ目の正答となった。
続けて、医師は、
「ここは、なんてところですか?」
と質問した。 「病院」と答えるところだが、守叔父さんの口からは、
「・・・。」
数秒待ったが、言葉が出てこなかった。
医師は、少し簡単な質問へと変更して、
「(ここは、)どんなところですか?」
と、質問し直した。
「病気を治すところ」などと答えるところを、守叔父さんは、
「ワカンナイ」
(分かんない)
と言った後、私を指差し、
「コノヒトカラ、
キタ、
ナニ?」
(この人から
来た、
何?)
と言った。 守叔父さんは、私が連れてきた場所だからという理由で、私に質問の答えを言わせようとしたようだ。
「私と月曜日に病院へ行く。」という約束をしたのに、「病院」という言葉が出てこなかったのであった。
医師は、答えられないと判断し、次の質問に進んだ。
「今、あなたの住んでいるところの都道府県は?」
「トドウフケン?」
「何区に住んでいるのですか?」
「ナニク?」
と、医師の質問に対して、その言葉の語尾を上げた質問形式で守叔父さんは答えた。
「都道府県」、「区」という言葉も理解できないようだ。
守叔父さんに会った初日、宿の住所をLINEで伝えたら、颯爽と宿の玄関前に迎えに来てくれたのに・・・。
「都道府県」、「区」を理解できない人が、伝えた住所をどのように理解して、迎えに来たのだろう・・・?
(つづく)
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