2022年8月3日水曜日

「泣けない人」その25




25 、上京初日.6

初陣の帰路、緊張から解放されたためか、若干の空腹を感じはじめていた。

レストランや食堂に立ち寄って食べる程の空腹感でないこと、そして、少しでも早く宿でリラックスしたいと思ったため、宿の斜向かいにあるコンビニに立ち寄る事とした。

そのコンビニは、どこにでもある大手のチェーン店であった。

入店直後、なぜか目前の棚の商品に視点を奪われた。

普段利用している自宅近所のチェーン店では見たことのないと思われる変わった商品であった。

何だろうと近づいて見てみると、「ミックスドライフルーツ」であった。

コンビニの出入口近くで「ドライフルーツ」を見かけた事は、はじめての事だった。

平べったい袋入りの物ならまだしも、カップ麺の容器程の大きさで、透明なプラスチック容器に入ったモノをコンビニで見たことはなかったと思う。

道の駅や、ドライブインのお土産売り場などで見かける様なモノであり、コンビニの定番商品ではなく、金額的にもチョッと割高の商品である。

日頃なら金額的に手を出し難い商品ではあるが、賞味期限を気にせずに食べられる事、そして、小腹の空いた状態で軽く食べるのには丁度良いモノであるとし、最初に目に留まったモノあったので、躊躇うことなく手に取った。

店の奥に行き、飲み物の陳列棚から350mlの缶ビールを一本取り出し、レジへ向かった。

会計を済ませた後、店を出て宿に戻った。
 




部屋に戻り、洗面所で顔を洗ってサッパリした後、缶ビールをプシュッと開け、ゴクゴクと喉を潤した。

ドライフルーツが丁度よい酒の肴となった。

ひと時ボーっとした後、豊治叔父さんに、初陣の状況報告のため、連絡を入れた。


 

「シルバーベンツ のナンバー○○○○が自宅前に止まっていますが、電気が消えてました。」
2021/11/29 19:36


 

戻ってきたメッセージは2通。

一本目には、食事でもして時間を潰すことの提案。

二本目は、
 

「焦らずに。この様な場合「普通は夜討ち朝駆け」です。」
2021/11/29 19:46


であった。

新聞記者が口にする言葉であるが、取材相手が仕事から帰宅した夜や、出勤前に自宅を訪問し取材することの意味である。

今夜のうちに、「第二陣」となる事を意味していた。

初陣に出る前にスパイカメラとボイスレコーダーの充電をしていた。それぞれ、無事に充電完了していた。

取扱説明書に従い、テスト録画、テスト録音を行ってみることにした。

 



 

それぞれの動作チェックや使い方を覚えるために1時間以上を要していた。

集中して作業していたため、時刻はいつの間にか21時を回っていた。

無事に録画、録音できることが確認できたので、第二陣に持って出かけることとした。

ビールによる緩やかな酔いのおかげで、リラックスもできた。

胸ポケットに二本のボールペンを挿し、出かけた。
 




初陣とはほんの少しだけルートを変えて、守叔父さんの自宅を目指した。

22時チョッと前に守叔父さんの自宅前に到着したが、特に変わった様子もなく、前回と同様に、部屋の灯りは消えていた。

 

車も同じようにとまっていた。

人の気配を感じないので、まだ、帰宅していないと思われた。

 

車が有るということは、同僚との食事か何か、夜の付き合いで遅くなっているのかもしれない。

 



 

第二陣は、何の収穫もなく、あっけなく終わる事となった。

(つづく)

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