2022年8月24日水曜日

「泣けない人」その27

 


27 、上京二日目.1


初陣、第二陣の結果を元に、明朝の第三陣「朝駆け」をどの様にしようか悩んでいるうちに、いつの間にか24時を回り新しい日を迎えていた。

帰宿後、既に二時間ほど経っており、緊張感はほとんどなかったものの、なかなか眠気が来ない状況であり、心身共に興奮状態から脱する事ができていないようだった。

バスタブにお湯を張って、ノンビリと風呂に入ることにした。

初めて使う宿の風呂。

バスタブにお湯を溜める時間がどのくらいかわからないので、スマホのタイマーを10分間にセットし、お湯を出した。

アラームを止め、風呂場に入ると、入湯すれば間違いなく溢れる量のお湯が溜まっていた。

もったいないな・・・。と思い、お湯を無駄に使うことに抵抗はあったが、ゆっくりと入湯し、ザーっと流れ出るお湯の音の響きを楽しんだ。

短い時間ではあるが、渓谷のせせらぎの様に感じ、ゆったりした気持ちになることができた。

お風呂でノンビリした時間を過ごし、一日の疲れを癒し、その後、床に就いた。

なお、寝つきが悪い場合を想定し、目覚ましアラームはセットせず、出発時間を決めず、自然に目が覚めた時から行動開始することにした。





 

11月30日、上京二日目の朝。

目が覚めたのは7時チョッと過ぎであった。

寝ぼけまなこの状態で、顔を洗い、歯を磨き、着替えた後、宿を出たのは7時半であった。





 

第三陣へ出発。

空を見上げる青空が広がり、朝日の直射日光がほどよく暖かく、散歩日和といった感じであった。

昨晩の暗い中の散歩では見えなかった色々な風景が見え、新たな気持ちで守叔父さんの家を目指すことができた。

20分程経ち、8時少し前に守叔父さんの住む低層マンションの近くに着いた。

少し離れたところで歩みを止め、マンションの様子を観察した。

エントランス付近には防犯カメラのようなものはなさそうであった。

一度、建物の前を通り過ぎ、エントランスの奥の方を観察した。

オートロックのような自動ドアも見当たらないので、自由に出入りのできる建物であることがわかった。

シルバーのベンツはとまっており、サンシェードも広がったままであった。そして、守叔父さんの部屋の遮光カーテンもきっちり閉められたままであった。

天気が良く、朝日の明るい状況で、カーテン越しに部屋の灯りが点いているかどうかはわからない。仮に消えていたとしても、守叔父さんは、昨晩遅く帰宅し、まだ、寝ている可能性もある。

守叔父さんが普通に生活しているならば、遮光カーテンが開き、レースの目隠しカーテンだけになっているだろうと予想していたが、状況としては、昨晩と何も変わっていないことになる。

玄関ドア側へ回れば、リビングの灯りがついているかどうかわかるかもしれないが、いきなり守叔父さんの部屋へ行くのはリスクがある。

とりあえず、別の階の状況を観察し、その後、守叔父さんの部屋の玄関をみることとし、リスクを少なくすることにした。





 

エントランスに入ると、すぐに集合ポストがあった。

守叔父さんの部屋番号のポストは、チラシなどがはみ出ているような事はも無く、郵便物が溜まっている感じはなく、長期にわたり外出している様子ではなかった。

あくまでも見た目の範囲であり、ポストの中に手を入れて確認したわけではない。

建物の奥行きは思ったより広かったので、間取りは2Kではなく、2LDKであろうと思われる。

エントランスのすぐ近くに階段があったので、別の階へ上がり、廊下および各部屋の玄関周辺の様子を調べた。

廊下側には風呂場の通風窓、ボイラー、玄関扉、そして玄関扉の横に縦長の採光窓があり、リビングの灯りが点いているかどうかの確認ができるかは微妙な感じである。

廊下の一番奥まで行ってみたけれども、行き止まりとなり、別の階段や裏口、緊急避難経路は無かった。

もし、別の階段が有れば、守叔父さんの部屋の玄関前を一度通過してエントランスへ戻れるけれども、各階とも廊下の奥は行き止まりであり、守叔父さんの部屋の玄関前を調べるには往復で二度通過せざるを得ない。

もし、通過直後に玄関が開いたら、逃げ場が無くなることになるので、第三陣では近づくのをやめることとした。

(つづく)
 

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