2023年2月8日水曜日

「泣けない人」その51

 


51 、上京二日目.25

城南島海浜公園の駐車場から海の方へ歩いている最中に、突然、松木の陰から飛行機が飛び出てきた。その飛行機は、そのまま、まっすぐ私の方に近づいてきて、ちょうど私の頭の真上を飛行機が通過していった!!!

ちょうど、公園の真上が飛行機の航路のようだ!!! なるほど、おすすめの撮影ポイントの一つであることが理解できた。

慌ててカメラを向けシャッターを切ったが、その写真は全くピントの合っていないぼけたものであった。なぜか、オートフォーカスの設定が”切”になっていたようだった。

 


オートフォーカスの設定を”入”に切り替えファインダーを覗き、動作確認のためにシャッターボタンを半押した。すると、だいぶ先の方をマイペースで歩いている守叔父さんにピントが合った。

そのまま、シャッターボタンを全押ししたので、城南島海浜公園できちんと撮影された写真の一枚目は、守叔父さんのバックショットとなった。

 




防風林の松の木を過ぎると、視界が広がり、左手に東京湾、右手に羽田空港が広がっていた。 そして、ちょうど飛行機が離陸し始めているのが遠くに見えた。

守叔父さんは、先にその飛行機を見つけたらしく、その飛行機を指差しながら、振り返り、今、飛び立ったらしいことを必死にアピールして私に伝えているようだった。

私は、カメラを飛行機に向け、何度となくシャッターを切った。 その機体は、旅客機と比べ小さいもので、私自身、初めて撮影する型式の飛行機であった。プライベートジェットなのだろうか・・・?

 



さすがは、羽田国際空港、東京の空の玄関口! いきなり鹿児島空港では見られない飛行機に遭遇できた!


守叔父さんは、非常に目が良いようで、離陸待ちの飛行機が滑走路の端に停まっているのが見えているみたいだ。

 

「クル!、クル!、モウスグ クル!」
(来る!、来る!、もうすぐ 来る!)



そして、その飛行機が加速し始めると、

 

「キタ!、キタ!、キターーー!」
(来た!、来た!、来たーーー!)



と教えてくれた。そして、一機、また一機と飛行機が離陸する度に、同じ事を繰り返した。




「叔父ちゃん、コンタクトも何もしてないんだよね! 裸眼なんだよね! ”目”がいいね!」と言うと、守叔父さんは、

 

「オレ、オサケモ ノマナイシ 
メガネモ ノマナイシ!」
(俺、お酒も飲まないし、
眼鏡も飲まないし!)



と言った後、少し笑い、そして、

 

「メガネハ キエマセン!」
(眼鏡は、消えません!)



と言った。 私は、ファインダーを覗きながら飛行機に集中しながらの会話だったため、そのヘンテコな会話には、適当に相づちをうっただけでスルーし、「僕自身は、去年、網膜剥離で片目が見えにくくなったんだ。」と伝えた、すると、守叔父さんは、

 

「ハッ、ハッ、ハッ!」
(はっ、はっ、はっ!)



っと、笑いはじめた。

私が網膜剥離になったことで、笑いをとったことになる。 網膜剥離の何が面白かったのだろう?

 





流行り病により国際線は少ないだろうが、国内線のANAやJALの機体をはじめ、色々な航空会社の飛行機が、次から次へと離陸し、頭上を飛び過ぎて行った。

撮影を始めてから30分ほど経った頃には、既に十機以上の飛行機を撮影していた。

(つづく)
 

0 件のコメント:

コメントを投稿