2022年11月2日水曜日

「泣けない人」その37

 


37 、上京二日目.11

立体交差の高架道路を登り、そして降りると片側4車線、計8車線の広い道路へ出た。

都内を南北に走る基幹道路の一つだと思われる。のちに調べると、第一京浜であった。その道路を北上している。 

 





守叔父さんは、理解し難い話を続けている。

 

「イマハ、モウタイヘン!」
(今は、もう大変!)



と、言い出した。そして、

 

「ドウダトオモウ・・・、オレノオカネ?」
(どうだと思う・・・、俺のお金?)



と、言った。 お金の事をどう思うかと聞かれても、答えようが無いのだが・・・。 現在の守叔父さんの収入額を推測させたいのだろうか? と思いついたタイミングに、

 

「サンジュウマンシカナイ。」
(三十万しかない。)



と言いながら、少し情けなさそうにハッ、ハッ、ハッと笑い声をあげた。
続けて、

 

「ソンデ、クルマノトコロニ、ヒャクニジュウマン ヲ ハラッテサー、」
(そんで、クルマの所に、百二十万を払ってさー、)



言った。三十万の収入に対し、何らかの出費が百二十万円!!!???
一体どういうことだろう??? それは、本当に大変なことであることに間違いない!

そして、ボソッと

 

「タイヘンダヨナ!」
(大変だよな!)



と言った。私は、守叔父さんが、大きな金銭トラブルを抱えているかもしれないことに、たまらず、「どういうこと?」と質問を返した。すると、

 

「テドリガ、サンジュウマン デ、 オレノトコロニ クルジャン。
ツウチョウガネ、ソンナカニ、オレハ、ソコデ、イツモ、
ジュウニマン、ジュウニマン ッテ、ハラッテルンデス」
(手取りが、三十万で、俺のところに来るじゃん。
通帳がね、その中に、俺は、そこで、いつも、
十二万、十二万って、払ってるんです)



と答えた。相槌として、「車代を十二万払っているの!」と言うと、

 

「ソウ!、ソウスルト、ジュウニマンデ、ノコッタノガ、
ジュウハチマン クライシカ ナイジャン」
(そう!、そうすると、十二万で、残ったのが、
十八万位しかないじゃん)



と言った。「百二十万を払ってさー」とは、何だったのだろう?
手取りが30万円、車代が12万円、残りが18万円ならば、120万円は何のお金なのだろう・・・? 私の疑問は未だに解決していないが、守叔父さんは、説明し終えた表情をしていた。

守叔父さんは、続けて、首の後ろに手を回しながら、

 

「ココガ、カタクテ、ホラ、
カイロ、カイロ ニ マイニチ イッテルノ」
(ここが、固くて、ほら、
カイロ、カイロに毎日行ってるの) 



と言い出した。カイロプラクティックなどの整体に毎日通う必要があるのだろうか?と思っていると、

 

「ゲツヨウビ、ゲツヨウビ、ゲツヨウビ ト ズーット カヨッテイルノ。」
(月曜日、月曜日、月曜日、ずーっと通っているの。)


と言っている。毎週と言うところを、毎日と言い間違えたのだろうか? 確かに、週一通いならば、カイロプラクティックも納得できる。「毎週月曜日にカイロ行くの?」と聞き返すと、

 

「ソウ!」
(そう!)



との答えが返ってきた。
言葉遊びではなく、言葉の誤用なのだろう。
先ほどの、「120万円」は、「12万円」と言い間違えた事だったのだろうか・・・?

私の頭の中は、守叔父さんの言葉を反すうしつつ、その状況を少しずつ理解しつつあった。

 





第一京浜を北上し、大きな交差点を3つほど通り過ぎた後、守叔父さんは、左にウィンカーを入れて、左折レーンへ進み入れた。

道路標識は、左折がJR大森駅方面である事を示していた。

信号を左折し進むと、すぐに京急本線の高架下を通過した。その後、100mくらい進んだところで、再度、左ウィンカーを点滅させはじめた。

目的地に到着したらしい。歩道の先に大きな建物が見え、その建物の上階には立体駐車場があるようだ。

(つづく)

 

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