56 、上京二日目.30
守叔父さんの家へ向かう第四陣。
午後5時を少し過ぎたタイミングで、宿を出発した。 昨日の初陣出発よりは、一時間半ほど早い時刻である。
日の入り後、30分ほど経っていたが、まだまだ明るく薄明の空であった。
大通りを走るクルマは、チラホラとヘッドライトを点けはじめていた。
守叔父さんの家へと向かう道は、既に見知らぬ道から通い慣れた既知の道へとなりつつあった。 そのため、昨日の初陣、第二陣、今朝の第三陣とは異なり、その道程はリラックスした状態で歩くことができた。
20分ほど経ち、守叔父さんの家に着くころには、「秋の日はつるべ落とし」のごとく、だいぶ暗くなっていた。 周囲を走るクルマのヘッドライトは、ほとんど点いていた。
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守叔父さんの家の駐車場には、守叔父さんのクルマが今朝と同じ場所、そして、今朝と ”同じ状態” で駐車されていた。 つまり、サンシェードがフロントガラスに設置されていたのである。
守叔父さんが、このクルマで宿の前に迎えに来てくれるまでは、このクルマが夏場から放置されているものかもしれない!と勘違いしていた。
守叔父さんの車が、年式は古くとも車内が良い状態だったのは、日々、サンシェードを設置し、紫外線対策をしているからだと納得した。
守叔父さんにとって、サンシェードは夏場だけのものではなかったのである。クルマを大事にするための一つの習慣であったのだ。
クルマの状況を確認したおかげで、一つの疑問が解決した。
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そして、守叔父さんの部屋の様子を見ると、窓の内側の遮光カーテンは、駐車場側の二部屋とも、キッチリと閉まっていた。
それぞれのカーテンの隙間からは室内の光が見えなかったので、室内の灯りは消えているようだった。
午後5時半に室内の灯りが消えているってことは、守叔父さんは外出中で不在ってことだろう。
なんらかの用事があるようだったので、私と別れた後、駐車場にクルマをとめ、その後、徒歩で外出したのだろうと思った。
守叔父さんは、どこに行っているのだろうか・・・?
徒歩で出掛けているならば、近い場所だろうか?
用事が終わった後に、夕食を一緒に食べることもできるかもしれないし・・・。
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とりあえず、守叔父さんへ電話を掛けることにした。
電話の呼び出し音が何度か繰り返されたが、守叔父さんは、なかなか電話に出てくれなかった。
あきらめて、終話ボタンを押そうと思ったタイミングで、電話が繋がった。
「モ、 シ、 モ、 シ、・・・。」
と、間の伸びた声が聞こえてきた。「もしもし、柑太郎です。 今日はありがとう。」と伝えた。すると、守叔父さんから、
「ネ・テ・タ。」
(寝てた)
との返事が返ってきた。 思わず「えっ?」って心の声が、口から出てしまった。午後5時半に寝ていたようだ。 守叔父さんから、
「ドウシタノ?」
(どうしたの?)
と聞かれたので、「めぐみ叔母さんに聞いたら、ホテルから叔父さん家までは、近いってことが分かったので、散歩のついでに来たんだけど・・・。」と伝えた。
「エッ? ドコニイルノ?」
(えっ? どこにいるの?)
と聞かれたので、「家の前にいるよ!、叔父さんのベンツの目の前にいるよ!」と伝えた。
「チョット、マッテ!」
(ちょっと、待って!)
との言葉の後、少し待つと、遮光カーテンの隙間から室内の灯りが点くのがわかった。そして、遮光カーテンが開き、続いて窓が開いた。
守叔父さんが、パジャマ姿で頭を搔きながら、ベランダに出てきた。そして、
「ドウシタノ? 」
(どうしたの?)
と改めて聞いてきたので、 「散歩!、歩いて来たの! まさか、寝ているとは思わなかった。 寝てるところ、起こしてごめんなさい。」と伝えた。すると、
「ドウスル?」
(どうする?)
と聞いてきたので、「どうもしなくて良いよ!、おやすみなさい。 今度、日曜日ね!」と伝え、宿に帰ることにした。
守叔父さんの家を後にしつつ、昨日の初陣、第二陣の時には、既に守叔父さんは寝ていたのかもしれない! と考えた。
(つづく)
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