2023年5月10日水曜日

「泣けない人」その61

 


61 、上京三日目.3


予定より早い時刻に掛かってきた守叔父さんの電話に驚きながら、私が呑川(のみがわ)の河口付近にいる事を伝えた。

すると、守叔父さんからは「ワカラナイ」との返事が戻ってきた。

「川の河口だよ」と伝えても、同様に「ワカラナイ」との返事しか返ってこない。

なんだか、昨日の待ち合わせ場所を決める際の電話による会話と同じようであった。地名を言っても「ワカラナイ」、場所の特徴を伝えても「ワカラナイ」との返事である。

 

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守叔父さんの家と私の宿の間の主要道路である産業道路(国道131号線:大鳥居交差点と大森警察署前交差点)には、橋が一本しか無い! (正確に言うと、旧呑川に架かっている橋もあるため、二本が正しい。)

産業道路は、ほぼ一直線に伸びており、また、一部を除き高低差もほとんどない。

その特異的に高低差のある部分が橋であり、盛り上がっている。 遠くからもその路面の傾斜がはっきりとわかる。 

また、その部分の道路の両端は欄干となっているため、そこが橋であり、すなわち川を渡っていることははっきりしている。

 

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橋のたもとから川沿いの道を海の方へ向かえば良いのだが・・・。

立て続けに「ワカラナイ」との返事しか返ってこない。

しかたなく、自分の居る場所への誘導をあきらめることにした。

 

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どこか案内しやすい場所・施設を考えたが、近場にはない。と言うか、説明しても「ワカラナイ」と言われる可能性が高い。

しかたなく、宿と守叔父さんの家のどちらかを選ぶことになる。

さて、どちらが近いだろう・・・?と考えてみたものの、どちらを選択しても、ほぼ同じ位の時間がかかってしまう。

宿の前の道路は駐車禁止なので、守叔父さんには、自宅に戻るように伝えることにした。

私はカメラを片付け、急ぎ守叔父さんの家を目指し歩き始めた。 

時間調整のために、あえて遠回りしたことが裏目に出てしまった。

人生において、思い通りにならない事は色々とあるが、ゆったりと事を進めている途中に、突如、予定外に急かされる状況へと変わってしまった事にすこしだけ苛立ちを感じていた。

苛立ちを抑えるために、「会えない予定が、会える様になったことに感謝せねば!」と心を切り替えて、歩みを加速させた。

10分ほど歩いたが、まだ守叔父さんの家までは数分かかる場所で、電話が掛かってきた。

電話に出ようとしたが、守叔父さんは気が短いのか、受話ボタンをスライドしようとする前に電話は切れていた。

少し歩き、もう少しで守叔父さんの家って所で、電話を掛け、今着きます!と伝えた。
電話のつながった状態で、交差点の角を曲がると、守叔父さんがクルマの横に立っているのが見えたので、電話を耳元から離して、「お待たせしました!」と声を掛けた。

守叔父さんは、振り向き私に気が付くと笑顔で手を挙げてくれた。

「ワカラナイ」を連発した人の表情ではなく、満面の笑顔であった。

 

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守叔父さんは、私が近づく間に乗り込み、駐車場からクルマをスーッと出した。

助手席のパワーウィンドウが下がり、車内から「どうぞ!」との声が聞こえてきた。

さて、どこに連れて行ってもらえるのだろうか・・・?

(つづく)
 

2023年5月4日木曜日

「ありえない絵画」



私の事務所の壁には、少し変わった絵が掛けられている。

グリーンをベースカラーとし、虎や鳥、そして、様々な植物がそれらを囲み同系色のグラデーションを呈している。

作者に内在する「ある種の混沌とした心情」を表現しているのかもしれない絵画である。

その壁には似つかわしくないモノかもしれないが、私は気に入っており、その壁に飾って、大切にしている
 

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ある日、事務所に来た客が、その壁の絵をまじまじと見た後、私にこう告げた。

「私、コノ作者の ''他'' の作品を見たことがあります。」と、

私は、「そんなはずはないのですが・・・。」と答えた。

なぜなら、その絵は私の娘が小学生の時に描いたものだからだ。

 

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めぐみ叔母さんから聞いた、旦那さまのお話。
 

2023年4月26日水曜日

「泣けない人」その60

 


60 、上京三日目.2

日曜日に会うつもりでいたのに、「11時30分には、行きます。」との守叔父さんの返事には、面喰い、そして戸惑いを感じた。

昨日の別れ際の守叔父さんの言葉は、一体何だったのだろう?

そんなに簡単に、スケジュールを変更できるのだろうか・・・?

私が連絡を入れたわずか2分後の返事であった。

その2分間で職場もしくは、仕事相手に対して連絡を入れて、早退の旨を伝える。その後、私に返事をする。といったプロセスを踏んでいるのだろうか?

私の感覚では、その様な間があったように感じていない。 守叔父さんの独自の判断だけで、スケジュールが変更できると考えた方が良いだろう。

まぁ、会えるのならば会った方が良いに決まっているが・・・。
雨も降っているし、ノンビリしようと思っていた心が、それを少しだけ拒否しようとも動いていた。

守叔父さんが、宿の前にクルマで来てくれたら、その時は、気分が変わり外出したくなるだろう!
4時間以上先の話だ! とりあえず、ノンビリとコーヒーを飲むこととした。

 

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コーヒーを飲みつつ、スパイ7つ道具のメンテナンスをはじめた。

ボイスレコーダーやスパイカメラの充電や内部データのバックアップなどである。


昨日のデータも再度、内容を確認しておいた方が良いだろう。
聞き逃した言葉、見逃した情報があるかもしれないし・・・。

 

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ボイスレコーダの音声は、二通りの方法で再生できる。

一つ目は、本体に、外付けのコントローラを接続して再生する方法。

二つ目は、USB接続で内部メモリに記録された音声ファイルをPCやiPad等にダウンロードし、音声ファイル再生ソフトで再生する方法である。

最初、一つ目の方法で試してみたが、コントローラの操作性がいまいちであること、そして再生音が悪かったので、二つ目の方法を試した。

音声ファイルは、WAVファイルでPCでもアップルでも使えるものである。

iPadとボイスレコーダーを接続し、音声データをダウンロード。

iPadで再生を行った。 思ったよりノイズが少ない状態で音声が記録されていた。

スパイカメラの方は、microSDカードに動画が記録されるので、そのmicroSDカード内のデータをiPadへコピーし、動画を再生した。

音声ファイル、動画ファイルをそれぞれ、早送りで視聴したが、これと言って、特に気になる事を見つけることはできなかった。

 

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集中して、それらの事をやっているといつの間にか3時間経過し、午前10時になっていた。

外を見ると雨は既に止んでいた。 ベランダに出て、雨後の澄み切った空気を肺に入れると、少し体に活気が戻ったような気がした。

ベランダでの深呼吸によって、私の心の中の「やる気スイッチ」のボタンがONになったようだった。

11時30分に来るって事なので、その少し前に守叔父さんは仕事から帰宅するだろう!

自宅前で待ち伏せし、仕事からの帰り道を確認しようと思い、11時位に守叔父さんの家に着くように出かけることにした。

最短の道のりで宿から守叔父さんの家に向かえば、早く着きすぎるので、呑川の川沿いや、海岸沿いの道を選択して、時間を調整することとした。

海岸沿いの道を選んだのは、時間調整だけでなく、飛行機の写真が撮れるかもしれないと言う期待からだった。

呑川の河口付近には、腰掛けるのに丁度良い高さの階段状の護岸があった。

30分位、その場所で羽田空港への飛行機の飛来を待ち、その写真を撮って時間調整をしようと考えた。

望遠レンズを構え、遠くの飛行機を撮影していると、携帯電話のバイブレーションとともに着信音が鳴り始めた。 カメラを下ろし、電話を受話しようとしている最中に着信音が消えてしまった。

発信元は、守叔父さんであった。 予定よりほぼ1時間早い10:35であった。

予定時刻よりだいぶ早く、着信音も短かったため、再度、電話を掛けてくれるだろうと思い、再度、カメラを構え、飛行機を撮影し始めた。

呑川の河口から飛行機の航路は1km以上離れているため、機影は小さなものしか撮影できないが、4機ほど撮影すると、再度携帯電話が鳴り始めた。

守叔父さんからの電話である。

受話し、「もしもし」と伝えると、

「着いたよ!」との返事が返ってきた。

「えっ?」と思わず、声が出てしまった。

迎えに来てくれる予定は、11時30分なのに、今は、10時40分。

守叔父さんは、今、私の宿の前に到着したようだった。 

職場から直接、宿に向かったのだろうか? それとも、仕事を1時間も早く終わらせる事ができたのだろうか・・・?

待ちぼうけを食らうより、早く来てもらう方が嬉しいが、こちらの計画が乱されるのに少し戸惑いを感じた。

(つづく)
 

2023年4月12日水曜日

「泣けない人」その59

 


59 、上京三日目.1


朝5時過ぎに目が覚めた。 昨晩は、ビールやワインのアルコールの力を借りたとはいえ、早く床についたので、昨日よりも2時間ほど早く目が覚めた。 まだまだ、緊張感が抜けていない事も影響しているのかもしれない。

カーテンを開けたが、まだ空は暗く、光は入ってこなかった。

窓を開けると、しとしとと弱い雨が降っている事に気が付いた。 日の出前であり、かつ雨雲のために暗かったのであった。

ベランダに出てみると、乾燥した室内と異なり、外気は湿り気たっぷりであり、乾燥した肌を一時的に潤してくれているようであった。

深呼吸をして体を目覚めさせた後に、部屋に戻った。

ボーっとした頭を活性化するため、インスタントコーヒーを入れ、ゆっくりと飲んだ。

テレビをつけると良いタイミングで天気予報をやっていた。午前中いっぱいは雨のようだ。
その「雨の予報」は、自然(天気)が私に少し休みなさい!と啓示してくれているような感じがした。

そう考えると、昨日の疲れが、まだ少し残っているようだ。午前中は、部屋でゆっくりして、午後に出かけようかな!と考えた。

 

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しばらくして、コーヒーで活性化してきた頭で、何をしなければならないかを考えた。

そうだ! めぐみ叔母さんへ連絡を入れなければ! 昨晩は、時差を考慮して連絡を入れるのを遠慮していた。日本時間の早朝ならば迷惑はかからないだろう。

LINEでメッセージを送信した。

 

「おはようございます。こんにちは。 
昨日は、深夜の連絡で失礼しました。 
今、昼食後に眠い状況では? 
守叔父さまの自宅へ 夕方17時半くらいに訪問しました。
電気もついていなく、人の気配がなかったので、 
守叔父さまの車の前から電話を掛けてみました。 
すると、寝ていた模様。電話に驚いた様子でした。 
寝巻きの格好で、ベランダに出てきてくれました。 
日頃、朝3時〜5時くらいに起床し、早い時間に出社しているみたいです。
上京初日、訪問した時間は、19時半、22時だったので、 
安眠中だったってことですね。 翌朝は8時に訪問。
すでに出社していたと言う事になります。 今朝も、
訪問しようと考えていたのですが、 雨が降っているので、
いくかどうか思案中です。」 
2021/12/1(水) 5:31



ほどなくして、めぐみ叔母さんからビデオ電話が掛かってきた。

メッセージの内容にプラスして、昨日の守叔父さんの様子を詳細に伝えた。もう少し、守叔父さんと会話をして様子をみてくださいとの事であった。

守叔父さんに関する話しの他、いろいろな話をしていたので、一時間近くの会話となった。

シアトルに居ると思っていためぐみ叔母さんは、バカンスでメキシコに行っているようだった。 この時期、シアトルは曇り空が多いため、日光を求めてメキシコの観光地へ行っているようだった。 ビデオ電話の画面を通して、メキシコの大きなヤシの木や雲一つない真っ青な空を見せてもらったおかげで、自分の心も少し晴れたような気がした。

 

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めぐみ叔母さんと会話した後、二杯目のコーヒーを入れ、ゆっくり飲みながら、守叔父さんへ、昨夕の突然の訪問に対しての非礼のお詫びのメッセージを送ることにした。

 

「おはようございます。柑太郎です。
天気予報通りの雨ですね😭
今日は、ホテルでのんびりしようと思います。
昨夕は、突然の訪問で、
びっくりさせてしまい、ごめんなさい。
まさか、すでに寝てるとは思いませんでした。
片道20分くらいでしたので、
丁度良い散歩距離でした。」
2021/12/1(水) 7:00 



すると、守叔父さんからすぐに返事が返ってきた。

 

「11時30分には、行きます。」
2021/12/1(水) 7:02



エエエエエーーー??? どういう事??? 
予想外の返事が返ってきた。

次に会えるのは、日曜日と昨日言っていたのに、「行きます。」とは・・・?
私のメッセージを他の人(仕事関係の人)からのメッセージと勘違いしているのだろうか?

確認のために、メッセージを送信した。

 

「今日も相手してくれるんですか?」
2021/12/1(水) 7:02



すると、即座に、
”OKAY”というスタンプが返ってきた。
2021/12/1(水) 7:03


間違いでは無いようだ。まだ、7時過ぎの状況で、仕事を早退することができるような感じである。


 

  「ありがとうございます。
では、待ってます。」
2021/12/1(水) 7:03



とメッセージを送信した。すると、


先程とは異なった
”YES”というスタンプが返ってきた。
2021/12/1(水) 7:04


スタンプにはスタンプを返した方が良いと思い、

 

”ありがとう”という
スタンプを送信した。
2021/12/1(水) 7:04

 

昨日の時点では、次いつ会える?と聞いたら、「今週の日曜日」って言っていたのに、今日も迎えに来てくれるようだ!

 少し、キツネにつままれた様な気持ちになった。

(つづく)
 

2023年4月5日水曜日

「泣けない人」その58

 


58 、上京二日目.32


八王子の豊治叔父さんとのメッセージのやり取りが続いた。

 

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(私)
体型は、痩せても、
太ってもいなく て、
 若々しい❗️
感じでした(>_<) 
2021/11/30 18:41

 

(豊治叔父さん)
それは今年の初めに会って確認しています。
アンチエィジング注射をしてるとの話しでした。
翌日に回数を 減らすように言って置きました。
問題は如何にしてMRI検査を受けさせるかです。 
2021/11/30 18:46

 

(私)
そうですね。
取っ掛かりを見つけた
いと思います(^_^)/ 
何らかの、守叔父さまの言動に
不一致があれば良い のですが。。。
2021/11/30 18:53

 

(豊治叔父さん)
やはり、守叔父の休日を聞き出し、 
東京は久しぶりだからと言って一日中を
一緒に遊びまわってみたら如何 でしょう。 
2021/11/30 19:35

 

(私)
今のところ、
日曜日に会う約束をしています(^_^)/
 なので、豊治叔父さまに会いに
行けるかなと考えてます。
2021/11/30 19:37

 

(私)
土日が休みで、土はすでに
予定あり との事です。
2021/11/30 19:38

 

(豊治叔父さん)
土曜日に来るならなるべく早く来て下さい。
晴れているなら丹沢や奥多摩にドライブにでも
行って食事でも しましょう。
2021/11/30 19:45

 

(私)
はーい(^_^)/
 楽しみです。
朝型生活 に変え、
朝一に向かえれば良いなと
思います☀️ 
2021/11/30 19:47

 

(豊治叔父さん)
今回の君の上京目的は家内には秘密です。
あくまでも君の用件で来たことにして下さいね! 
2021/11/30 19:51

 

(私)
承知しました(^_^)/
今回の目的は、 飛行機の写真撮影に、
羽田空港に来 たと言うことにします(^_^)/ 
一眼レ フ&望遠レンズ持参しています(^_^)/
2021/11/30 19:53

 

(私)
ワイドバンドレシーバーも(^_^)/
2021/11/30 19:54

 

(豊治叔父さん)
了解です。待ってます。
2021/11/30 19:55

 

(私)
では、また、変わった事があったら
連絡します(^_^)/ 
2021/11/30 19:56

 

(豊治叔父さん)
OK 
2021/11/30 19:56


 

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電話による肉声で伝えるならば、5分程で済む内容ではあったが、1時間半ほどのやりとりとなった。

アラフィフで、老眼も少しずつ進んできたため、スマホの小さな画面をフリック入力するのは難儀である。 まだ、キーボードで入力した方が早いのにな・・・、と思った。

豊治叔父さんは、70歳を超えている! のに、スマホを使いこなしているな!!!と感心する。

 

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めぐみ叔母さんへの連絡は、明朝に入れよう!と思い、本日の作業は、全て完了!となった。

一段落すると、急にお腹が空いてきた。 まだ、夕飯を食べてない!

宿近くのコンビニに行って、ハンバーグ&豚生姜焼弁当、500mlの缶ビール一本、そして、スリムボトルの赤ワインを購入し、夕食とした。

弁当を食べつつ、ビールを一本飲み終わっただけで、だいぶ酔いが回っていた。 疲れているんだな・・・。と感じた。 

宿の備え付けの食器にはグラスがなく、マグカップしかなかったので、そのマグカップでワインを飲むことになった。 少し味気ないけど、仕方がない。

ワインで酔いを深くした後、床に就いた。

(つづく)
 

2023年3月29日水曜日

「泣けない人」その57

 


57 、上京二日目.31


午後5時半には熟睡していた守叔父さん!!!

あまりにも早い就寝には、さすがに驚いた。 

そして、就寝時刻が異常に早いことは、大切な情報だと考えた。そのため、守叔父さんの家から宿に戻る途中、歩きながら八王子の豊治叔父さんへ電話を掛け報告する事にした。

守叔父さんの状況を伝えると、豊治叔父さんから、

 

「なぜ、そんなに早く寝るんだろう・・・?」



と、不思議そうなニュアンスの返事が戻ってきた。 「僕が、守叔父さんの家を訪問した昨日の夕方、夜には、既に守叔父さんは寝ていたのかもしれない! そして、今朝は、すでに外出していたのかもしれない。」 と伝えた。すると、豊治叔父さんは、

 

「そうかもしれないな・・・、報告ありがとう。 
今、夕飯の準備中で手が放せない!
じゃ、またあとで。」



という事で、短い電話となった。

電話を切ったあと、守叔父さんが床に就いたのは何時だったのだろう・・・?  そして、起床は何時なのだろう・・・? と、守叔父さんの生活リズムを推測しながら、宿に戻ることになった。

 

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午後5時に床に就き、睡眠8時間とすると、起床は午前1時となる。

仕事の開始時刻は、午前3時頃かもしれない。

勤務時間を8時間と考えると、午前11時の終業となる。つまり、午前中で仕事を終えることになる。

守叔父さんは、仕事を少しだけ早退したような事を言っていたので、守叔父さんの言っていることは、辻褄が合っているようだ。

守叔父さんは、時間指定の荷物を運ぶ仕事に就いており、その荷物は早朝の配送ってことなのだろう。

勤務の時間が丑三つ時から始まるってことで、早朝勤務であり週4日の勤務でも良いのだろう。

 

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限られた情報をもとに、適当に推測し、そして、守叔父さんの言動と辻褄が合っているだけで、すこし安堵した。

とは言え、まだまだ、守叔父さんが軟禁されていないという事は、証明されてはいないが・・・。

 

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宿にもどり、ゆっくりシャワーを浴びた。

 昨晩のシャワーでは単に汗を洗い流すだけの行為であったが、今日は、一仕事終えたって感じで、リラックスして温かいシャワーを浴びる事ができた。

 

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守叔父さんと次に会うのは、日曜日の予定である。

それまでの時間をどの様に過ごそうか?

明日から土曜日の間に、八王子を訪問し、本日の報告をしようかな・・・。

簡単な報告と共に、豊治叔父さんの都合を聞こうと考え、ショートメッセージを送信した。

 

「ホテルでシャワー浴びて、一段落し
ました。 昨晩、今朝にわたる三度
の訪問で人の気配がなかったのです
が、夜はすでに寝ていて、朝は不在
だったということですね。ちょっ
と、ホットしました。 豊治叔父さ
まのお宅にも伺えればと思っていま
す。ご都合はいかがでしょうか?」
2021/11/30 18:27



豊治叔父さんからの返事は、

 

「ひょっとしたら仕事をしているかも
と考えて早寝早起きを思い出して君
にメッセージを送りました。良い方
に当たってホッとしました。めぐみ
叔母さんにも電話する時間を考える
ように言って置いて下さい。」
2021/11/30 18:33



であった。私は、

 

「承知しました(^_^)/ 守叔父さまは、
3時~5時位に起床、出社と言うこ
とですね。 明日、私の起床時間次
第で、守叔父さまの自宅へ、散歩の
呈で、伺えればと思います(^_^)/」
2021/11/30 18:40



と返事した。すぐに、豊治叔父さんから返事がきた。

 

「了解です。宜しくお願いします。」
2021/11/30 18:41


(つづく)
 

2023年3月23日木曜日

「泣けない人」その56

 


56 、上京二日目.30


守叔父さんの家へ向かう第四陣。 

午後5時を少し過ぎたタイミングで、宿を出発した。 昨日の初陣出発よりは、一時間半ほど早い時刻である。

日の入り後、30分ほど経っていたが、まだまだ明るく薄明の空であった。 

大通りを走るクルマは、チラホラとヘッドライトを点けはじめていた。

守叔父さんの家へと向かう道は、既に見知らぬ道から通い慣れた既知の道へとなりつつあった。 そのため、昨日の初陣、第二陣、今朝の第三陣とは異なり、その道程はリラックスした状態で歩くことができた。

20分ほど経ち、守叔父さんの家に着くころには、「秋の日はつるべ落とし」のごとく、だいぶ暗くなっていた。 周囲を走るクルマのヘッドライトは、ほとんど点いていた。

 

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守叔父さんの家の駐車場には、守叔父さんのクルマが今朝と同じ場所、そして、今朝と ”同じ状態” で駐車されていた。 つまり、サンシェードがフロントガラスに設置されていたのである。 

守叔父さんが、このクルマで宿の前に迎えに来てくれるまでは、このクルマが夏場から放置されているものかもしれない!と勘違いしていた。

守叔父さんの車が、年式は古くとも車内が良い状態だったのは、日々、サンシェードを設置し、紫外線対策をしているからだと納得した。

守叔父さんにとって、サンシェードは夏場だけのものではなかったのである。クルマを大事にするための一つの習慣であったのだ。

クルマの状況を確認したおかげで、一つの疑問が解決した。

 

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そして、守叔父さんの部屋の様子を見ると、窓の内側の遮光カーテンは、駐車場側の二部屋とも、キッチリと閉まっていた。

それぞれのカーテンの隙間からは室内の光が見えなかったので、室内の灯りは消えているようだった。

午後5時半に室内の灯りが消えているってことは、守叔父さんは外出中で不在ってことだろう。

なんらかの用事があるようだったので、私と別れた後、駐車場にクルマをとめ、その後、徒歩で外出したのだろうと思った。

守叔父さんは、どこに行っているのだろうか・・・? 

徒歩で出掛けているならば、近い場所だろうか?

用事が終わった後に、夕食を一緒に食べることもできるかもしれないし・・・。 

 

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とりあえず、守叔父さんへ電話を掛けることにした。

電話の呼び出し音が何度か繰り返されたが、守叔父さんは、なかなか電話に出てくれなかった。

あきらめて、終話ボタンを押そうと思ったタイミングで、電話が繋がった。

 

「モ、 シ、 モ、 シ、・・・。」



と、間の伸びた声が聞こえてきた。「もしもし、柑太郎です。 今日はありがとう。」と伝えた。すると、守叔父さんから、

 

「ネ・テ・タ。」
(寝てた)



との返事が返ってきた。 思わず「えっ?」って心の声が、口から出てしまった。午後5時半に寝ていたようだ。 守叔父さんから、

 

「ドウシタノ?」
(どうしたの?)



と聞かれたので、「めぐみ叔母さんに聞いたら、ホテルから叔父さん家までは、近いってことが分かったので、散歩のついでに来たんだけど・・・。」と伝えた。

 

「エッ? ドコニイルノ?」
(えっ? どこにいるの?)



と聞かれたので、「家の前にいるよ!、叔父さんのベンツの目の前にいるよ!」と伝えた。

 

「チョット、マッテ!」
(ちょっと、待って!)



との言葉の後、少し待つと、遮光カーテンの隙間から室内の灯りが点くのがわかった。そして、遮光カーテンが開き、続いて窓が開いた。

守叔父さんが、パジャマ姿で頭を搔きながら、ベランダに出てきた。そして、

 

「ドウシタノ? 」
(どうしたの?)



と改めて聞いてきたので、 「散歩!、歩いて来たの! まさか、寝ているとは思わなかった。 寝てるところ、起こしてごめんなさい。」と伝えた。すると、

 

「ドウスル?」
(どうする?)



と聞いてきたので、「どうもしなくて良いよ!、おやすみなさい。 今度、日曜日ね!」と伝え、宿に帰ることにした。

守叔父さんの家を後にしつつ、昨日の初陣、第二陣の時には、既に守叔父さんは寝ていたのかもしれない! と考えた。

(つづく)